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無縁 ムエン

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デジタル大辞泉の解説

む‐えん【無縁】

縁のないこと。関係のないこと。「我々とは無縁の出来事」
地縁・血縁などの縁者がないこと。⇔有縁(うえん)
仏語。
㋐だれのためというような対象の区別がなく、すべて平等であること。絶対の慈悲の境地。
㋑前世に仏・菩薩と因縁を結んでいないこと。救われる機縁のないこと。⇔有縁(うえん)

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大辞林 第三版の解説

むえん【無縁】

( 名 ・形動 ) [文] ナリ 
縁のないこと。関係ないこと。また、そのさま。 「事件とは-である」 「我々とは-な世界の出来事」
死者を弔う縁者のいないこと。
〘仏〙
仏・菩薩などと人々の間に、救済について特別の関係が存在しないこと。また、仏・菩薩などに救済される可能性や関係をもたないこと。 「 -の衆生しゆじようは度し難し」
対象を区別しないこと。万物を区別しない仏の智慧が、対象を縁とすることなく平等に慈悲を及ぼすこと。
▽↔ 有縁

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

無縁
むえん

日本中世史学上の学術用語で、人間や場所について、それらが主従関係、親族関係をはじめとする世俗の私的な支配に拘束されない状態にあることを意味することば。元来は仏教用語で、〔1〕原因・条件のないこと、〔2〕対象がないこと、〔3〕対象の区別がないこと、〔4〕存在しないこと、などを意味することばとしても知られる。日本中世史家網野善彦(あみのよしひこ)が、主として戦国時代の「無縁所」とよばれる寺院の法的・社会的性格に関する研究成果をもとに、無縁とは世俗権力の私的支配下にないということを意味することばで、同様の意味内容を有する公界(くがい)とともに日本中世(鎌倉・南北朝・室町・戦国時代)における自由の思想の中核をなす根本概念の一つであったとする学説を発表して以来、この意味での用法が定着しつつある。これまでの研究によれば、無縁の性格を有する場所としては道路、市場、海浜、野山などが、また無縁の人間(集団)としては、遍歴漂泊の職人・芸能民などの非農業的職種の人々があげられている。さらには、農民ではあるが、平民百姓もまた在地領主による私的隷属から自由であろうとする志向を有していたという限りで無縁の原理を共有していたとされる。中世においてこれらの場所あるいは人間は、自らが無縁もしくは公界であることを根拠として世俗の私的権力の支配を拒否しうる権利を有しており、実際、世俗権力の支配に対抗するために当時しばしば無縁(公界)ということばが援用されたというのがこの説の眼目である。
 無縁の場所や人間(集団)の具体的属性としては、以下の八つの特徴が指摘されている。〔1〕不入権、すなわち国家警察権の侵入を排除する権利の享受、〔2〕領主の賦課する租税の免除、〔3〕自由通行権の保証、〔4〕周辺地域における戦闘行為や訴訟行為などの紛争から隔絶した平和領域たることの保証、〔5〕私的な主従関係が無縁の場所には及びがたいこと、〔6〕外界において発生した債権債務関係の効力が無縁の場所では否定されること、〔7〕当時、一般には厳しく追及された犯罪責任に関する連座制の不適用、〔8〕未開社会の年齢階梯(かいてい)的な秩序原理を受け継いだ、「老若(ろうにゃく)」とよばれる平等原理に基づく組織形態の採用。
 以上のような、無縁を日本中世における自由を意味することばとして理解する学説に対しては、近年、中世史史料上の無縁の用例研究による限り、上記の八つの特徴についてこれを無縁ということばで表現している例はほとんどなく、また無縁であることを理由になんらかの積極的な権利主張がなされている例もほとんど検出されないので、再検討を要するという有力な批判も提起されている。[植田信広]
『網野善彦著『無縁・公界・楽』(1978・平凡社) ▽勝俣鎮夫著『戦国法成立史論』(1979・東京大学出版会) ▽阿部謹也他著『中世の風景』上下(中公新書) ▽植田信広「中世前期の『無縁』について――日本における『自由と保護』の問題によせて」(『国家学会雑誌』第96巻第3、4号所収・1983)』

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世界大百科事典内の無縁の言及

【自由】より

… ひるがえって,liberty,freedomの語義についてもさまざまな論義があるが,その語源が共同体の成員権を意味するという説に立つならば,日本の場合も,古代の平民(公民),中世の平民百姓,近世の百姓はみな自由民ということも可能であり,この場合の自由は私的な隷属を拒否し,みずからを奴隷―不自由民から区別する自由ということになる。またそれを共同体からの自由と解するならば,日本の中世においても,身寄りのない貧しさを意味する語として広く使われた〈無縁〉という言葉は,転じて親子・主従等の縁を積極的に切った自由な境地を示す語となり,私・内証(ないしよう)に対する公・世間を意味する〈公界(くがい)〉の語は,私的な縁・保護を断ち切る自由を示す言葉として用いられ,戦国時代に用いられている〈楽〉〈十楽(じゆうらく)〉も,同様な意味をもったといってよい。しかし江戸時代に入ると,無縁は貧困を意味するもともとの語義にもどり,公界は苦界に,〈らく〉は一部地域の被差別民の名称となっていった点に,さきの〈自由〉の語義のマイナス評価とも関連する日本の社会の問題がひそんでいるといえよう。…

【楽市令】より

…事実,中世の自由都市,自治都市を代表する堺や博多も楽市ないしは楽津と呼ばれる存在であったことは,1587年豊臣秀吉が博多に出した法令が,楽市という言葉はないものの,その内容はまったく保証型楽市令と同じものであったことからも確認される。ところで,このような権力と無縁の存在である楽市場が,その機能を楽市令というかたちで権力に保証されたり,さらに権力によって利用されたりするということは,すでに本来の楽市としての性格を放棄したことを意味する。すなわち,楽市場は,戦国大名などの権力の浸透によって把握されることによって,楽市令というかたちでその存在が姿を現すとともに,同時にそれは本来的意味での楽市場の消滅であったのであり,楽市場を前提にした楽市令もその後まもなく姿を消してしまうのである。…

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