沖縄方言論争(読み)おきなわほうげんろんそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「沖縄方言論争」の意味・わかりやすい解説

沖縄方言論争
おきなわほうげんろんそう

沖縄県における標準語励行運動の評価をめぐる論争。1940年(昭和15)1月から約1年にわたって展開された。論争は柳宗悦(やなぎむねよし)ら日本民芸協会一行が沖縄を訪問し、当時の沖縄県で、方言を否定し標準語励行が鳴り物入りで推進されている事態を批判したことに端を発した。柳らは方言のもつ文化的価値を力説し、標準語の一方的な励行は将来に禍根を残すものであると主張。これに対し沖縄県学務部は、県民は標準語がまともにしゃべれないために多大な不利益を被り、劣等感を抱くことになっていると、事例をあげて反論、方言をいたずらに重視するのは学者、文化人の現実を無視した手前勝手な主張にすぎないとやり返した。論争の舞台ははじめ沖縄の新聞であったが、やがて東京の論壇をも巻き込んで標準語、国語と方言の関係を問う一大論争にまで発展した。この論争は単に言語政策の是非を問題にしただけでなく、沖縄における近代化と伝統文化の対立の問題をも取り上げたところに意義があった。

[高良倉吉]

『谷川健一編『叢書わが沖縄 第二巻』(1970・木耳社)』

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