河原巻物(読み)かわらまきもの

百科事典マイペディアの解説

河原巻物【かわらまきもの】

《三国長吏由来記》《蛭子末流由来記》《皮田由来書》など,各地の被差別部落に伝わる由来書を総称していう。盛田嘉徳〔1912-1981〕が,その中でも早くに成立したと思われ,広く分布している《河原由来書》の名と,これらの由来書が巻物の形をとることから,〈河原巻物〉という用語を提唱して定着した。いずれも近世期の成立と考えられる偽文書だが,《河原由来書》では盤古の子の〈縁太羅王子〉を自らの始祖とし,また《八幡重来授与記》では神功皇后の三韓出兵と関わらせるなど,古代・中世の神話的説話的世界に接合して,現在の地位や特権の起こりを説くという構造をもつ。木地屋集団における惟喬(これたか)親王伝説などと同じく,伝承・説話的世界から,逆に現実を説いた例として注目すべきである。→説話文学

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世界大百科事典内の河原巻物の言及

【源頼朝】より

… ところで,さきの北畠の声聞師が源頼朝を主人公とする曲をレパートリーに加えていたのは重視される。なぜならば,北畠の声聞師というのは北畠散所(さんじよ)を根拠地として活動した当代の賤民的雑芸者の集団であるが,それとの歴史的連関はさておくとして,江戸時代の身分制で賤民身分の中核にすえられた〈えた〉が,〈えた〉としての権益を主張するための根本的な〈証文〉として受け伝え,保持していた文書(名称は種々あるが,こんにちでは《河原巻物(かわらまきもの)》と総称されている)に,源頼朝から引き立てられて御用をつとめたのが始まりであると由来を説きおこすのが通例だからである。たとえば,江戸浅草の〈穢多頭(えたがしら)〉弾左衛門(だんざえもん)家伝来の《頼朝卿御朱印の写(うつし)》では,1180年9月に〈鎌倉長吏(ちようり)弾左衛門藤原頼兼(ふじわらのよりかね)〉が頼朝の朱印状により,長吏,座頭(ざとう),舞々(まいまい),猿楽(さるがく),陰陽師(おんみようじ)など各種の職業の支配権を得たという。…

【由緒書】より

惟喬(これたか)親王を職能の祖とする木地屋(きじや)の由緒書と偽文書も,神祇官を通じて天皇に属した轆轤師(ろくろし)の伝統を背景に,江戸時代に入ってから全国の木地屋を組織するために作られたものと思われる。また被差別部落には,〈河原巻物〉ともいわれ,その職能・特権,差別の由来を語るさまざまな由緒書が伝わっているが,そこにしばしば現れる〈延喜御門〉(醍醐天皇)は,16世紀に塩売りとして活動した坂の者(非人)の正当な文書(〈北風文書〉〈八坂神社文書〉)にも現れるので,この由緒書も単に江戸時代に捏造(ねつぞう)されたものではなく,戦国時代のなんらかの事実・伝統を背景にしているのである。このほか,近江保内(ほない)商人の後白河天皇の偽綸旨(りんじ)とつながる由緒書をはじめ,職人の伝える偽文書には由緒書が結びついていたものと思われるが,これらのうち,またぎの〈山立根元巻〉が源頼朝にその特権の起源を結びつけているように,東国の職人には頼朝や徳川家康にみずからをつなげているものが多い。…

※「河原巻物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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