改訂新版 世界大百科事典 「油圧ポンプ」の意味・わかりやすい解説
油圧ポンプ (ゆあつポンプ)
hydraulic pump
油圧装置に用いられるポンプ。油圧装置は加圧された液体(一般に鉱油)を利用するため,制御がしやすい,伝達動力のわりに小型であるなどの特長をもつ。これは,一つには液体の圧力が高いことに基づいており,このため,油圧ポンプとしては原理的に高圧での作動に適している形式のポンプが用いられる。ポンプ作用部の構造により,油圧ポンプは,回転式(歯車ポンプ,ベーンポンプ,ねじポンプ)と往復式(ピストンポンプ)に大別され,また別の分類として,ポンプ軸1回転当りに押し出す液体体積(押しのけ容積)が変えられる可変容量形と,それを変えられない定容量形とがある。ピストンポンプ,ベーンポンプに可変容量形があり,油圧装置の効率を重視する用途に用いられる。歯車ポンプはかみ合いながら回転する歯車の歯とケーシング壁の間の空間に液体をはさむ形式のもので,吸込口で歯と歯の間に流入した液体は,歯車の回転によりケーシングに沿って吐出口へと押し出される。ベーンポンプはローターの回転につれて半径方向に出入りする可動羽根によって歯車ポンプと同様の作用をするもの,ねじポンプは2本あるいは3本のねじ棒をかみ合わせながら回転させてポンプ作用を行うものである。ピストンポンプを含め,これらのポンプは,液体を満たした密閉容積の移動あるいは容積変化により,液体を吸込口から吐出口へと押し出してポンプ作用をするもので,容積形ポンプと総称される。容積形ポンプでは,原理上,吐出圧力はポンプ回転数に無関係であり,ポンプに組み合わされる相手方の特性によって定まる。このため容易に高圧を発生し,圧力が変化しても流量はほとんど変わらない。
→ポンプ
執筆者:山口 惇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報