日本大百科全書(ニッポニカ) 「法医毒物学」の意味・わかりやすい解説
法医毒物学
ほういどくぶつがく
forensic toxicology
法医学的見地から毒物を研究する学問。毒物学のなかでも独特の分野であり、法医中毒(毒性)学ともいう。生体、死体、または物体を対象とし、薬毒物の作用や証明が法律的に問題となるものを広く取り上げる。変死体あるいは中毒患者よりの毒物の証明といった内容のほか、不明の粉末内容の検索、その作用、代謝などの究明も含み、集団中毒や公害問題にも関連する。現場でのにおい、嘔吐(おうと)物、飲食物や容器の検査も必要となる。薬毒物の分析を中心に研究するのを裁判化学といい、法医毒物学と密接な関係がある。毒物による自殺では一酸化炭素ガス中毒が多く、他殺では青酸や農薬を用いる場合が多く、よく社会的関心事となる。
[澤口彰子]