他殺
たさつ
自殺に対する概念で,故意に他人の生命を奪う行為を総称する。日本の刑法は,自殺行為を処罰しない。ただ他人の自殺行為に関与し,教唆,幇助などをする行為を処罰するにとどめている (202条) 。これに対し他殺行為は,被害者と加害者との身分関係,被害者の同意,嘱託の有無によって,普通殺人罪,尊属殺人罪,自殺関与罪・同意殺人罪を区別して処罰している。外国の立法例には,謀殺,故殺の区別や嬰児殺しなどを認めるものもあるが,日本の刑法はこれらの区別を認めていない。日本の他殺の手段,方法として多いのは,鋭器による損傷,絞殺,鈍体による殴打などである。防御創のあること,ためらい創のないこと,自分ではできないような部位の損傷であることなどは,他殺死体の損傷の特徴である。頸を絞める場合,他殺のときは頸部を巻く回数が少く,結び目は前または横のことが多い。他殺後に,家に放火して焼死にみせかけたり,水中に遺棄して溺死を装ったり,轢過して暴力の痕跡を隠蔽しようと試みられることがある。
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た‐さつ【他殺】
〘名〙 人に殺されること。
人手にかかって死ぬこと。
※東京朝日新聞‐明治三八年(1905)七月五日「医科大学に於て
解剖したる結果、他殺と認定されたる事は」
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たさつ【他殺】
広義には,他人の行為による死をいい,狭義には,他人の故意による行為によってひき起こされる死をいう。すなわち,広義の他殺は,殺人やそそのかして自殺させたり,自殺するのを手伝って死亡させたり,依頼されるか承諾を得てその人を殺したり,他人を傷害して死亡させたり,過失によって他人を死亡させたり,業務上の必要な注意を怠って他人を死亡させたり,保護をしなければならない人を遺棄して死亡させたりすることである。狭義の他殺は,これらのうち過失によって他人を死亡させたものが除外されている。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
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