津山事件(読み)つやまじけん

改訂新版 世界大百科事典 「津山事件」の意味・わかりやすい解説

津山事件 (つやまじけん)

23歳の男性が引き起こした日本犯罪史上稀有(けう)な大量殺人事件。現場が岡山県津山市に近い苫田郡西加茂村(現同市,旧加茂町)なので,この名がある。犯人の都井睦雄(1915-38)は,元来,敏感・繊細で,祖母と姉を敬慕していたが,肺結核罹患徴兵検査の不合格,異性関係の挫折などから内面葛藤が強まり,20歳ごろ自殺観念が生ずる。ついで,この観念を母体にして村人への復讐および殺人衝動が芽生え,周到な計画・訓練・予行ののち,ついに1938年5月21日午前2時,実行に移る。まず,奇抜なかっこうで武装してから,同居の祖母を殺し,そのあと村の家々をつぎつぎに襲って,約2時間で即死28名,重傷死2名,重軽傷3名を出し,最後に近くの山林で覚悟の自殺をとげる。この事件は,犯人の死後に精神鑑定を行ったことでも有名で,鑑定者は,都井の場合,敏感性の性格特性と闘争性のそれが混在して,そのうえに反応性に関係妄想を中心とする精神病が発展したものと推定している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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