浮穴郡(読み)うけなぐん

日本歴史地名大系 「浮穴郡」の解説

浮穴郡
うけなぐん

和名抄」所載の古代伊予国一四郡の一。流布本に「浮穴」と記し、「宇城安奈」と訓ずる。郡内の郷として、高山寺本・流布本ともに井門いど拝志はやし荏原えばら出部いずべの四郷を記す。鎌倉中期に成った「拾芥抄」には「浮名郡」とある。「うきあな」が「うけな」に転訛したものか。もとは重信しげのぶ川中流域の南北両岸で、現在の松山市・温泉おんせん重信町・伊予郡砥部とべ町の各一部を含む地域であったが、南部山地の開発とともにしだいに領域を拡大して現上浮穴かみうけな郡の地を併せるに至ったと推定される。伊予国のほぼ中央部、東南は土佐国、北は新居にい周布しゆうふ久米くめの三郡、西は伊予郡と海、西南喜多きた宇和(東)の諸郡に接する山がちの広大な郡である。

初見は天平一九年(七四七)二月勘録の法隆寺伽藍縁起流記資財帳のなかに、伊予国にあった法隆寺の荘園一四所のうちとして「浮穴郡一処」がみえる。「続日本後紀」承和元年(八三四)五月二六日条に伊予国人浮穴直千継の名がみえ、

<資料は省略されています>

とある。浮穴氏については同書同年に「河内国若江郡人浮穴直永子、賜姓春江宿禰」とあり、大和にいた浮穴氏の一族が海を越え伊予国に住みつき、郡名の起源となったものと推定される。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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