日本大百科全書(ニッポニカ) 「海岸動物」の意味・わかりやすい解説
海岸動物
かいがんどうぶつ
海岸にすむ動物の総称。海岸とは海と陸の境の所をさすが、正確にどの範囲までを海岸とよぶかについては、人によって多少意見が異なる。一般に海岸動物というときには、潮の干満によって空気中への露出と海中への水没を繰り返す潮間帯と、その直上にあって荒天や膨潮のときだけ海水につかる潮上帯にすむ動物をさす場合が多い。潮上帯ならびに潮間帯では潮汐(ちょうせき)や波によって陸的環境と海的環境が交互に現れ、そのためそこでは陸起源と海起源の両方の動物をみることができる。陸起源のものとしては、昆虫類、クモ類、ダニ類などがあげられるが、これに比べると海起源のもののほうが種類、量とも豊富で、下等な海綿類から脊椎(せきつい)動物の魚類までさまざまな動物群がみられる。その構成種は一般に、潮間帯上縁部から下方に向かって分布帯を形成して変化するいわゆる帯状分布を示すことがよく知られている。それらの活動は、普通、陸起源のものでは海岸が大気中に露出したときに、反対に海起源のものでは水没時に活発化する。ただし、砂浜や干潟に生息するスナガニ類や岩礁海岸でよくみられるフナムシのように、海起源でありながら摂餌(せつじ)などのおもな活動を干出時に行うものもある。
海岸動物は、それらのすむ海岸地形の違いにより、その種類のみならず、生活型にも違いがみられる。岩礁海岸においては、フジツボ類やイソギンチャク類といった固着性の動物が量的に卓越する。転石海岸では、転石の上側よりも下側のほうが動物は豊富で、転石に固着するものから、カニ類、ヤドカリ類のような移動性のもの、さらにゴカイ類のように転石下の砂や泥に穴居しているものまで認められる。砂泥質の海岸では、大部分の動物は砂泥中に体を埋没させるか穴居している。最近各地でよくみられるようになったコンクリート製の堤防や消波ブロックからなる人工海岸においては、岩礁海岸に似た動物がみられるが、その種類組成は自然の岩礁海岸に比べて貧弱である。
[和田恵次]