改訂新版 世界大百科事典 「海洋気候」の意味・わかりやすい解説
海洋気候 (かいようきこう)
oceanic climate
海洋上や海洋中の小島に現れる温和な気候をいう。大陸気候と対照的な特徴を有しており,気温の年較差・日変化が小さい。また,年変化や日変化において,最高気温・最低気温の出現時期や時刻が陸上のそれよりも全体として遅れる。最暖月や最寒月はいずれも1ヵ月から2ヵ月くらい遅れるのが普通である。1年を通じて湿度が高く,雲量が大きく,したがって雨量も多い。とくに冬に多雨となる傾向がある。風は一般的に強く,細かいちりが少なく,空気は澄んでいる。海洋で温和な気候が出現する原因はシュミットW.Schmidtが考えた渦乱流による熱交換現象での説明が認められている。つまり,海水中では乱流によって生じた無数の渦が熱エネルギーをより深層にまで運ぶため,表層の昇温はより小さくなる。一方,冷却過程でも表面からの出放射による熱エネルギーの損失は深層からの同様な熱伝達で補われ,表層の冷却は抑えられるからである。
執筆者:山下 脩二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報