精選版 日本国語大辞典 「渡拍子」の意味・読み・例文・類語
わたり‐びょうし‥ビャウシ【渡拍子】
- 〘 名詞 〙
- ① 能・狂言の囃子事の一つである下破(さがりは)のこと。また、その時に奏せられる太鼓入りの平乗拍子。起伏の耳立たない静かな調子のもの。
- [初出の実例]「恋の重荷の能に、思ひの煙の立別れは、静かに、渡びゃうしのかかり成べし」(出典:申楽談儀(1430)万事かかり也)
- ② 神輿の渡御や山車(だし)の進行に合わせて奏する神楽囃子。
- [初出の実例]「わたり拍子してや梯(かけはし)木曾躍(をどり)〈作者不知〉」(出典:俳諧・毛吹草(1638)六)
- ③ 歌舞伎の下座音楽の一つ。太鼓・当たり鉦・能管を奏し、三味線を伴って、祭礼の行列や遊郭での遊女の道中、大勢の人物のにぎやかな登場などの場面に用いる。郭を象徴する「すががき」の三味線には必ず打ち囃す。
- [初出の実例]「渡り拍子になり、向ふより梠中(あひちう)八人〈略〉出で来り」(出典:歌舞伎・暫(1714))