山車(読み)ダシ

デジタル大辞泉 「山車」の意味・読み・例文・類語

だし【山車/花車】

祭礼のとき、引いて練り歩く屋台。人形や花などを飾りつける。やま。ほこ。だんじり 夏》
[類語]檀尻山鉾

やま‐ぐるま【山車】

ヤマグルマ科の常緑高木。一科一属一種。山中に自生し、高さ約15メートル。葉は枝の先に輪状に互生し、長楕円形で先がとがり、つやがある。5、6月ごろ、黄色い小花が総状に咲く。果実は袋果。樹皮からは鳥もちを作る。中部地方以南から朝鮮半島・中国南部に分布。とりもちのき。

さん‐しゃ【山車】

だし(山車)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「山車」の意味・読み・例文・類語

やま‐ぐるま【山車】

  1. 〘 名詞 〙 ヤマグルマ科の常緑高木。本州の山形県以西、四国、九州の山地に生える。高さ一五メートル、径六〇センチメートルに達する。葉は長柄をもち枝先に車輪状に集まってつく。葉身は倒卵形で縁に鈍い鋸歯(きょし)がある。初夏、枝端に花被のない黄緑色の小花を多数開く。果実は半球形で径一センチメートルぐらい。樹皮で鳥黐(とりもち)をつくる。材は器具用。とりもちのき。おおもちのき。〔物品識名拾遺(1825)〕

さん‐しゃ【山車】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 祭礼のとき、装飾などをしてひきだす車。だし。〔資治通鑑‐唐紀〕
  3. 瑞象の名。人工を用いず、自然に円曲な木で出来た車。天下太平の時に、山に現われるという。
    1. [初出の実例]「祥瑞〈略〉山車。自然之車。山蔵之精」(出典:延喜式(927)二一)
    2. [その他の文献]〔礼記疏‐礼運〕

だし【山車・花車】

  1. 〘 名詞 〙 祭礼のとき、人形や花など種々の飾り物をつけて、引いたりかついだりする屋台。花などを入れた竹かごの編み残しの部分を大きく垂れ下げて出してあったところからの名称。やま。だんじり。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「今はただ祭りの情を祭先(ダシ)計り」(出典:雑俳・続真砂(1730))

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改訂新版 世界大百科事典 「山車」の意味・わかりやすい解説

山車 (だし)

祭礼に際して,神輿とは別に,人形,花などの風流(ふりゆう)(装飾)を凝らして,ひいたり担いだりする屋台の総称。柳田国男のいう〈見せる祭り〉を構成する中心的な装置となっている。京都祇園祭ぎおんまつり)の山鉾は,その代表的なものである。ほかに,だんじり,曳山(ひきやま),山笠(やまがさ),太鼓台(たいこだい)など,時代や地方によって名称や形態は多様である。とくに都市の祭礼に付随して発展し,祇園祭はもとより,大坂の天神祭(てんじんまつり),江戸の神田祭(かんだまつり)など,大都市を代表する祭礼は,例外なく,大量の山車をともなうものであった。

 〈だし〉といういいかたは,屋台から高く掲げられた飾りを指すものと考えられるが,異説もあって,定かでない。ただ〈山車〉という当て字は,祭りの場に神霊を招くために設置された〈作り山〉に由来するものであろうことは,ほぼまちがいがない。その起源は,平安時代の京都の諸祭礼にさかのぼる。すなわち《本朝世紀》には,998年(長徳4)の祇園会に,無骨という雑芸人が大嘗会(だいじようえ)の標山(しめやま)に似せたものを作って社頭に渡したことを記している。大嘗会の標山というのは,大嘗会のとき,庭上に設けられる2基の作り山のことであり,そこにはさまざまの祥瑞(しようずい)を表す意匠が施されていたというから,これをまねた無骨の作り物を,祭礼山車の古いかたちとみることができる。また1013年(長和2)の祇園会には〈散楽空車〉,つまり散楽(さんがく)を演じるための屋根のない車が登場する。さらに同時期の加茂社祭礼には,多くの装飾を施した〈風流車〉〈笠車〉が出ており,当時の記録から,それらが著しく豪華をきわめたものであったことも知られる。これら各種の〈車〉の出現は,本来,神の住む聖地である山のかたちをなぞらえた〈作り山〉が,平安京の祭礼のなかで華麗な風流の練りものに変質していく過程をうかがわせて十分であった。

 もっとも,祇園祭に山鉾と呼ばれる山車が恒例となるのは,南北朝期以降のことであり,室町時代になると,祇園社の氏子圏を構成する各町が,財力にまかせ,競って故事にちなんだ趣向の山を作るようになり,その影響は稲荷社の祭礼にも及んだ。また,近世に近づくと,地方の都市でもこれをまねるところがあり,やがて一部の農村にも波及した。さらに18世紀中期には,土地ごとに独自の山車が創出されるにいたる。その形態は,山型,屋台(やたい)型,舟型,灯籠(とうろう)型などに大別され,かつ台上で歌舞伎からくりを行うもの,音曲やお囃子はやし)に重点を置くもの,人形を飾るもの,巨大な造型を誇るもの等々,豊かなバリエーションを生み出した。さらに山車同士を激しく衝突させたり,アクロバティックな操法を競う祭礼も少なくなかった。今日,山車の形態別の分布をみると,たとえば近江長浜を中心とする曳山の分布,名古屋を中心とするからくり屋台の広がり,瀬戸内海沿岸の太鼓台の伝播のように,おのずから一種の地方文化圏の形成を読みとることができるのであって,山車をともなう祭礼の形成が地域文化の成熟と軌を一にしていたことが理解される。また,山車の製作にかかわる地方の工芸職人の技術の向上にも看過できないものがあって,その伝統は現在にも継承されている。以上の意味あいからすると,現在残存する山車は,近世の都市祭礼の歴史的遺産と規定して大きな誤りはない。近代にはいって,電線などの障害があって,どちらかというと小型化を余儀なくされ,巨大な山車は少なくなった。博多の山笠のように,飾山とかき山を別にしたところもあったほどである。しかし,都市化が進行した現代,伝統的な祭礼が急速に消滅・衰退していくなかで,なお山車の出る祭礼は,おおぜいの観衆を集めて活発に行われており,各都市の観光資源ともなっている。これも山車がそもそも都市的な環境で育成されたことの結果と考えられる。
屋台
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百科事典マイペディア 「山車」の意味・わかりやすい解説

山車【だし】

祭礼に繰り出す飾り屋台。もとは神の依代(よりしろ)として松や杉の葉,髯籠(ひげこ)などを飾った柱頭をさした。平安時代大嘗会(だいじょうえ)の移動神座に用いた標山(しめやま)(庭に設けられた2基の作り山)をまねて作られたのが山車の古い形とみられる。中世風流(ふりゅう)の流行とともに華美になり,山形,屋形,船車形,灯籠(とうろう)形の屋台に人形や花鳥を飾り,歌舞音曲の人びとの乗るものも現れた。鉾(ほこ)は武器が神体化され,疫病神送りの幸鉾(さいのほこ),山車などに用いられたもの。ふつう祇園祭では車をつけてひくのを鉾,かつぐのを山と呼ぶ。だんじりも山車と同義だが,肩にかつぎ鉾を立てないものが多い。ほかに曳山(ひきやま),山車(さんしゃ),屋台,山笠(やまがさ),傘鉾(かさぼこ)など,形や所により種々の名がある。
→関連項目祇園太鼓秩父夜祭祭り山鉾

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山車」の意味・わかりやすい解説

山車
だし

祭礼に出る練り物の屋台。山、鉾(ほこ)、人形などで飾りたてて、これを大ぜいで担ぐか車に乗せて引く。ダシは「出しもの」の義で、祭りに招き寄せる神の依代(よりしろ)(神座(かみくら))として、屋台の中心に突き出した飾りの名に由来する。山、鉾、屋台、だんじりなどの作り物も同じ意味のものである。その古い姿は平安時代の文献にみえる大嘗祭(だいじょうさい)の標山(しめやま)にみられる。標山とは、神の標めた(占有・領有した)山という意味で、神を標山に招き寄せて、神泉苑(えん)から宮中の祭場まで引いてくる。この移動式神座の形式は、中世になると風流(ふりゅう)化され、京都八坂(やさか)神社の祇園(ぎおん)祭の山鉾のように風流の飾り物を美しく仕立て華美になった。近世になると祇園祭の山鉾をモデルとした山車が地方都市に普及し、全国的に行われるようになった。その名称、形態はさまざまであるが、東日本では山車、屋台などとよび、西日本では笠(かさ)鉾、山笠、山鉾、楽車(だんじり)(車楽、地車、壇尻、段尻とも書く)、曳山(ひきやま)などとよぶことが多い。これらは笛、太鼓、鉦(かね)の祭囃子(ばやし)を奏するが、山車の上でからくり人形、歌舞伎(かぶき)芝居、舞踊を演じる所もある。山車、屋台の出る祭礼では、京都祇園祭、飛騨(ひだ)高山祭、近江(おうみ)長浜曳山祭、博多(はかた)祇園祭、秩父(ちちぶ)夜祭などが有名である。

[渡辺伸夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山車」の意味・わかりやすい解説

山車
だし

神社の祭礼に引く山,鉾,人形などを飾った屋台。神が乗り移る鉾の上の飾りの「出し」に由来する。山形,屋形,船形,灯籠形など種々の形式がある。京都府京都市の祇園祭や岐阜県高山市の高山祭,埼玉県秩父市の秩父夜祭が有名であり,特に高山祭の山車は操り人形でよく知られている。2016年,これらを含む 18府県 33の祭りが「山・鉾・屋台行事」として国際連合教育科学文化機関 UNESCO世界無形遺産に登録された。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「山車」の解説

さんしゃ【山車】

岐阜の日本酒。酒名は、飛騨・高山祭の絢爛豪華な祭り屋台「山車(だし)」に由来。大吟醸酒、吟醸酒、純米酒などの主要商品で、アベリア、ベゴニア、日日草などの花から分離培養した「花酵母」を使用。華やかな香りと辛口の味わいが特徴。原料米は山田錦、ひだみのりなど。仕込み水は北アルプスの伏流水。蔵元の「原田酒造場」は安政2年(1855)創業。所在地は高山市上三之町。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「山車」の解説

山車 (ヤマグルマ)

学名:Trochodendron aralioides
植物。ヤマグルマ科の常緑高木,薬用植物

山車 (ヤマグルマ)

植物。モチノキ科の常緑高木,園芸植物。モチノキの別称

山車 (ヤマグルマ)

動物。貝

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世界大百科事典(旧版)内の山車の言及

【屋台】より

…屋体とも書く。祭礼の引きものには山車(だし),山,鉾(ほこ),地車(だんじり)等があり,これらを総称して屋台ともいう。山車や山,鉾には来臨する神の目印として柱を高くかかげるといい,地車の類には屋形だけで柱がない。…

※「山車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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