溶融塩発電炉(読み)ようゆうえんはつでんろ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶融塩発電炉」の意味・わかりやすい解説

溶融塩発電炉
ようゆうえんはつでんろ

核燃料物質を混合した溶融塩燃料とする液体燃料発電炉。燃料自体が炉心外に循環し、一次冷却材となる。液体燃料は固体燃料のような成形加工が不要で、放射線損傷などの問題がないため燃料交換の必要がなく、核燃料物質の補給なども連続的に行うことができる。また、核分裂反応をコントロールしやすく、軽水炉にくらべ安全性も高い。

 原子力発電炉開発の初期の段階から、化学プラントである原子炉には液体燃料が望ましいとして、さまざまな液体を対象として研究が行われてきた。アメリカのオーク・リッジ国立研究所では、フッ化リチウムとフッ化ベリリウムの二元系溶融塩(略称フリーベ)を用いた溶融塩実験炉を1965年から1969年まで4年間運転し、基礎技術を確立した。フリーベ系溶融塩核燃料は、核燃料を溶かし込む核反応媒体、反応熱を運び出す熱輸送媒体、反応生成物を処理する化学処理媒体の三機能を兼ねるため、発電所の機構を単純な設計にまとめることができる。この成果を踏まえ、同研究所では、トリウム親物質としてウラン233を生成する溶融塩増殖炉の実現を目標とし、1971年に100万キロワット級の溶融塩増殖炉の概念設計を完成させた。しかし、トリウム溶融塩炉は、核兵器原料となるプルトニウムをほとんど生成しないなど、軍事利用に不向きであることなどから、開発計画は中止された。

 日本においては、燃料自給自足・負荷追従型の小型トリウム溶融塩発電炉FUJIの概念設計と実用化が提案されている。

[古川和男]

『古川和男著『原発安全革命』(文春新書)』

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