日本大百科全書(ニッポニカ) 「親物質」の意味・わかりやすい解説
親物質
おやぶっしつ
fertile material
転換によって核分裂性の核種に変えることのできる物質。原子力エネルギーの源泉となる核分裂性核種で天然に存在するのはウラン235だけである。しかし原子炉中での核反応により、ウラン238は中性子を捕獲してプルトニウム239あるいはプルトニウム240に変換される。これらの核種も、ウラン235と同じく核分裂性物質であり、その核分裂に伴って発生するエネルギーを利用することができる。こうしてウラン238は有益な娘核種を生み出す豊饒(ほうじょう)なfertile物質であるという意味で親物質とよばれる。プルトニウム241はプルトニウム240を経て生成するので、後者を前者の親物質ということもある。また、トリウム232もウラン238同様、原子炉内で中性子の作用により核分裂性物質であるウラン233を生成するので親物質である。また重水素‐三重水素核融合反応に必要な三重水素(トリチウム)はリチウムからつくられるので、リチウムも親物質である。
[中島篤之助 2016年10月19日]