軽水炉(読み)けいすいろ

精選版 日本国語大辞典 「軽水炉」の意味・読み・例文・類語

けいすい‐ろ【軽水炉】

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デジタル大辞泉 「軽水炉」の意味・読み・例文・類語

けいすい‐ろ【軽水炉】

減速材軽水(普通の水)を用いる原子炉の総称。軽水は中性子を吸収しやすいため、燃料には濃縮ウランを使う。炉心の熱を高温高圧の水として取り出す加圧水型PWR)と、炉心の熱で直接蒸気を発生させる沸騰水型BWR)がある。軽水型原子炉LWRlight water reactor)。→重水炉黒鉛炉
[補説]世界の原子炉の8割以上が軽水炉で、その8割をPWRが占める。日本の原子炉はすべて軽水炉で、PWRとBWRが同数となっている(2015年3月現在)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「軽水炉」の意味・わかりやすい解説

軽水炉
けいすいろ

軽水減速軽水冷却型原子炉のことを略して軽水炉、あるいはLight-Water Reactorの頭文字をとってLWRともいう。この原子炉はアメリカで開発された商業用発電炉で、世界の原子力発電の主流を占めており、出力密度が高いことが特徴である。中性子の減速材には普通の水、すなわち軽水が使われており、同時にこの水が炉心を冷却する冷却材の役割をしている。燃料には基本的に約3%に濃縮された二酸化ウランが使われている。

 軽水炉には加圧水型原子炉沸騰水型原子炉があり、前者はPressurized-Water Reactorの頭文字をとってPWRあるいは単にP、後者はBoiling-Water Reactorの頭文字をとってBWRあるいは単にBという。PWRはアメリカの二大メーカーの一つであるウェスティングハウス社が開発したもので、日本では三菱(みつびし)重工業と東芝が技術提携し、日本原子力発電関西電力、四国電力、九州電力、北海道電力がそれを導入している。これに対してBWRはゼネラル・エレクトリック社が開発したもので、日本では日立製作所、東芝が技術提携し、日本原子力発電、東京電力東北電力中部電力中国電力北陸電力電源開発J-POWER)がそれを導入している。

[桜井 淳]


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改訂新版 世界大百科事典 「軽水炉」の意味・わかりやすい解説

軽水炉 (けいすいろ)
light water nuclear reactor

冷却材を兼ねた減速材に加圧した軽水を用い,低濃縮ウランもしくは若干のプルトニウムを混合したウランの酸化物を燃料として用いる原子炉をいう。冷却材に沸騰を許し,生成する水蒸気を直接利用する(直接サイクル)沸騰水型原子炉boiling water reactor(略称BWR)と,冷却材に沸騰を許さず炉心で高温になった水を蒸気発生器に導き,そこで別の水に熱を伝えて蒸気を発生させる(間接サイクル)加圧水型原子炉pressurized water reactor(略称PWR)とがある。人類が使いなれた水を主材料に使っていること,アメリカという大きな市場をもつ国で,ゼネラル・エレクトリック社とウェスティングハウス社という巨大電機メーカーが,加圧水型原子炉と沸騰水型原子炉という二つのやや異なる型式で競争しつつ実用化を目指したことにより急速に普及し,これが各国へも波及した。現在はアメリカをはじめ,フランス,日本,ドイツなどで多く使われていて,1990年代初頭では世界の原子力発電設備の59%が加圧水型原子炉,28%が沸騰水型原子炉となっており,今後とも主流の位置を占めていくと予想される。1970年代の初めには非常用炉心冷却系ECCSの有効性論争,さらには中小配管や蒸気発生器配管の応力腐食割れによるクラックの発見が相つぐなどのいわゆる初期トラブルが続出し,あるいは保守や運転時の各種誤操作による大事故も経験したが,80年代に入りようやくこれらを克服し,安定な運転に入りつつある。なおこれらの運転経験を踏まえて改良していく努力も各国において行われ,日本では改良型BWRが柏崎6・7号機から採用されている。
原子炉
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百科事典マイペディア 「軽水炉」の意味・わかりやすい解説

軽水炉【けいすいろ】

減速材・冷却材に軽水を用いる原子炉。LWR(Light Water Reactor)と略称される。世界の原子力発電炉の大半を占める。加圧水型と沸騰水型に分かれる。2011年3月に,大事故となった福島第一原発の原子炉は沸騰水型軽水炉。冷却装置を作動させる全電源が津波などの影響で喪失されたことで大事故に発展した。
→関連項目朝鮮半島エネルギー開発機構

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化学辞典 第2版 「軽水炉」の解説

軽水炉
ケイスイロ
light water reactor

一般的には,通常の水(軽水)を減速材,冷却材に使用する原子炉.慣用的には,発電用原子炉で原子炉圧力容器に軽水を満たし,3% 程度の低濃縮ウランを燃料とする原子炉.発電炉の主流で,世界の80% 以上を占める.325 ℃,150 atm 程度の高温・高圧に加熱した水を蒸気発生器(熱交換器)に送り,発生させた蒸気で発電機のタービンを駆動する加圧水型動力炉(PWR)と,圧力容器内で直接発生させた蒸気を用いる沸騰水型動力炉(BWR)の2種類がある.PWR,BWRの順に1950年代にアメリカで開発された.現在,世界の発電用軽水炉の3/4がPWRである.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軽水炉」の意味・わかりやすい解説

軽水炉
けいすいろ
light-water reactor

軽水 H2O を減速材と冷却材に使うタイプの原子炉の総称。沸騰水型原子炉 BWRと加圧水型原子炉 PWRがあり,どちらも早くからアメリカで開発され,原子力発電所や原子力船などのための原子炉として発展,世界的に普及して原子力利用の中核としての地位を確保した。燃料は主として濃縮ウランである。世界中で稼働している発電用原子炉の6割強が軽水炉である。

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世界大百科事典(旧版)内の軽水炉の言及

【核熱利用】より

…日本では原子力製鉄や高温化学への利用を目的として,出口温度約950℃の多目的超高温ガス実験炉の開発を進めている。 軽水炉の核熱利用では,(1)発電用大型軽水炉の蒸気の一部用,(2)電力・蒸気併給の中小型軽水炉,(3)温水供給専用の低温低圧小型軽水炉の3方式が検討されている。いずれの場合も,原子炉側と利用側との間には熱交換器を置いて,放射性物質の漏れによる問題の生じないよう設計される。…

【原子力】より

…原子力潜水艦は48年ころから開発され,54年世界初の原子力潜水艦ノーチラス号が進水した。原子力潜水艦の原子炉には,今日の加圧水型軽水炉の原型である濃縮ウラン燃料・軽水減速冷却型が用いられた。アメリカ以外の国でも核武装が進み,ソ連は49年,イギリスは52年,フランスは60年,中国は62年,それぞれ最初の核実験を行った。…

【原子炉】より

… 原子炉で使用する核分裂性核種を含む物質を燃料と呼ぶ。ここでは減速材に冷却材を兼ねて軽水(普通の水)を使用している原子炉(軽水炉)をモデルに原子炉内の中性子の振舞いを説明する。 軽水炉の燃料には235Uは約2~3%しか含まれておらず,残りの約97~98%はウラン238 238Uである。…

※「軽水炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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