滝尻王子宮十郷神社(読み)たきじりおうじみやとごうじんじや

日本歴史地名大系 「滝尻王子宮十郷神社」の解説

滝尻王子宮十郷神社
たきじりおうじみやとごうじんじや

和歌山県中辺路町栗栖川くりすかわの南端部、石船いしぶり川が富田とんだ川に合流する渓谷に面し、熊野街道中辺路に沿う。旧村社。古くは滝尻王子とよばれ、熊野九十九王子の一つで五体王子(熊野権現金剛蔵王宝殿造功日記)。本地は不空羂索菩薩(正中三年以前の成立とされる「熊野縁起」仁和寺蔵)。滝尻王子跡は県指定史跡。滝尻は「為房卿記」永保元年(一〇八一)一〇月二日条に「戌剋登滝尻之人宿」とみえるのが早く、「中右記」天仁二年(一一〇九)一〇月二三日条には「天晴、此暁不浴水、未明出宿所、渡石田川十九度、此間号賀茂里、巳一点初入御山内来着滝尻之前川上一許町、(中略)昼養了於此川浴水於向岸上祓、次参王子許奉幣如先、先攀登滝上坂、十五町許踏巌畔漸行登、見三百町蘇屠婆如立手」とあり、王子がすでに成立していたことが知られる。右の「初入御山内」の傍記は、滝尻の地が熊野神域の入口にあたることを示し、この付近に町石の先蹤と思われる「三百町」と記した卒塔婆があったことも記される。また「源平盛衰記」巻四〇(維盛入道熊野詣附熊野大峯の事)に「其日は滝尻に著給、王子の御前に通夜し給、(中略)明ぬれば峻しき岩間を攀登り、下品下生の鳥居の銘、御覧ずるこそ嬉しけれ」とあり、ここから熊野本宮へ連なる山々は熊野の一霊域とみなされていた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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