死者の供養塔や墓標として作られ,頭部に五輪形を刻み,梵字などを記した板木。卒都婆,率都婆などとも書く。語源的には釈迦仏の遺骨を収めた仏塔であるストゥーパが漢訳されたもので,広義には三重塔,五重塔,十三重塔などの塔や五輪石塔などをも指すが,今日一般に用いる卒塔婆の意は木製の塔婆を指す。木製卒塔婆には角塔婆,板塔婆,経木(へぎ)塔婆の別がある。角塔婆は主として四角塔婆であり,埋葬上の墓標として,あるいは寺堂の開帳や遷仏供養,護摩法要,施餓鬼,流れ灌頂などに供養塔として立てられる。六角塔婆の事例もある。板塔婆は角塔婆の薄型で,葬儀の日や忌中の間7日ごとに1本ずつたてる七本塔婆,さらに年忌塔婆があり,いずれも供養塔である。経木塔婆を笹塔婆ともいい,板塔婆をさらに薄くし,長さも短くしたもので,盆,彼岸,年忌などに墓へ供えられる。板塔婆や経木塔婆を寺堂へ死者追善のために納める事例は,奈良県の当麻寺でも中世からみられた。卒塔婆を建立ないし納入することは単に墓標のみならず,死者の滅罪と救済を意味し,平安時代から板木の卒塔婆が作られ,墓標や供養塔として機能した。また滅罪のために流し塔婆も行われた。卒塔婆の頭部には上から下へ宝珠,半月,三角,円,方の形を刻む。墓標塔婆は天台宗,真言宗では上から下へ空,風,火,水,地の5字,ないしそれにあたる梵字を記し,その下に〈為法名菩提也〉と記し,浄土諸宗は名号,日蓮宗は題目の下に法名を記す。民間の最終年忌の際の枝つき塔婆,関東・東北にみられる安産祈願のためのY字形の犬卒塔婆(犬供養)は,仏教以前の習俗を伝えるものと思われる。
執筆者:赤田 光男
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サンスクリット語のストゥーパstūpaの音写。率都婆、卒覩婆、卒堵婆などとも書き、「そとうば」とも読む。また塔婆(とうば)、塔(とう)とも略称する。元来、古代インドの土饅頭(どまんじゅう)(覆鉢(ふくばち))型の墓をさす。中国、日本では寺院建築上必要な建物で、五重塔、三重塔、多宝塔などが建てられた。五大(地、水、火、風、空)を象徴する5個の石を重ねた五輪塔、石塔の一つで板形にした板碑(いたび)などがある。とくに、日本の近世以降、死者の追善冥福(ついぜんめいふく)を祈るために細長い板でつくったものを卒塔婆とよんだ。その形式は五輪塔と同じように、五輪の形を上部に切り込みを入れてつくった塔婆で、所定の文字を書いて、墓のそばに立てる習慣ができた。この板塔婆を卒塔婆、塔婆とよび、建造物のほうを単に塔とよんで区別している。
[石上善應]
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…卒都婆,率都婆などとも書く。語源的には釈迦仏の遺骨を収めた仏塔であるストゥーパが漢訳されたもので,広義には三重塔,五重塔,十三重塔などの塔や五輪石塔などをも指すが,今日一般に用いる卒塔婆の意は木製の塔婆を指す。木製卒塔婆には角塔婆,板塔婆,経木(へぎ)塔婆の別がある。…
…釈迦の遺骨を納めた聖建造物。パーリ語でトゥーパthūpa,中国や日本では窣堵波,卒塔婆(そとば),塔婆,塔,浮図(ふと)などといい,スリランカではダーガバdāgaba(遺骨を納める所を意味するdhātugabbhaの転訛)とも呼ぶ。また礼拝対象一般を指すチャイティヤと同義とされることもある。…
…これに対し庶民は石の塔を積むことでも作善(さぜん)になるというので河原に出て石塔(しやくとう)を行った。石造の卒塔婆(そとば)(五輪塔,宝篋印塔,板碑など)はこの信仰の中からおこった。死者のために埋葬地,火葬地に追善供養として卒塔婆が造立された。…
…《兵範記》には久寿2年(1155)に村上天皇の系譜をひく源氏の墓が北白河の寂楽寺の北山に21ヵ所もあると記されている。 貴族の墳墓の上には卒塔(都)婆(そとば)が立てられた。その早い例は《文徳実録》の嘉祥3年(850)4月18日条にみえる仁明天皇の深草陵である。…
…平安時代には貴族の間で多宝塔などの木造供養塔を墓に立てることが行われ,やがてこれを石塔(塔)にかえるようになる。《慈恵大僧正御遺告》天禄3年(972)条に,死後,埋葬地に仮の卒塔婆を立て,49日以内に石塔婆を作ってこれにかえよとの遺言が記されている。10世紀には卒塔婆を墓標として立て,貴人は石製塔婆をも用いたことが知られる。…
※「卒塔婆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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