改訂新版 世界大百科事典 「火成説」の意味・わかりやすい解説
火成説 (かせいせつ)
plutonic theory
岩石の生成に水の役割を重視する水成説に対し,地球内部の火(熱)の役割を重視する説。18世紀の末にイギリスのJ.ハットンにより提唱され,やがて一般化された。ハットンは水中堆積物の存在を否定したわけではなく,浸食,運搬,堆積,続成(固化),隆起,浸食……の周期的な地層の形成過程を認め,隆起の原動力を地球内部の熱に求めた。そして,大地が上昇する際の差別運動によって褶曲や断層ができるとした。一方,地球内部の熱で溶融したマグマのあるものは地下で冷却・固結して深成岩(花コウ岩など)となり,あるものは地表に流出して溶岩になるとして,火成岩も存在することを強調した。これまで水成岩の代表とされていた花コウ岩が火成岩になったために,水成説は根底からゆさぶられた。ハットン説は難解なためその普及は遅れたが,19世紀前半には火成説が水成説にとって代わった。19世紀に発展した地質学はこの火成説に負うところが多い。なお,英語のplutonic theoryは,ローマ神話の冥府の神プルトPlutoにちなむ。
→水成説
執筆者:今井 功
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報