改訂新版 世界大百科事典 「水成説」の意味・わかりやすい解説
水成説 (すいせいせつ)
Neptunism
すべての岩石は始原海洋中に析出・沈殿してできたものか,その二次的堆積物であるとする説。水中で形成された始原岩は,花コウ岩,片麻岩,片岩,粘板岩など,無化石で石英脈の多い硬い岩石からなる。始原岩はやがて始原山系を構成するが,海水位の低下によりこの山系が海面上に露出すると,削剝されて砕屑物がそのまわりの海中に堆積する。これが生物遺骸を含む二次岩あるいは成層岩である。こうして順次新しい地層が形成される。16世紀ころから芽生えたこの水成説は,聖書のノアの洪水説と結びついて,当時の地球生成論をしばしば混乱させたが,N.ステノやマイエB.de Mailletらによってその基礎が固められ,18世紀後半,ドイツのA.G.ウェルナーによって確立された。しかし,18世紀末ごろ,岩層の形成に地下の火(熱)の役割を重視したイギリスのJ.ハットンが,火成岩の生成過程を明らかにして以来,水成説は衰退していった。
→火成説
執筆者:今井 功
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報