ケイ酸塩を主成分とする高温の溶融体であるマグマが冷却、固結してできた岩石。堆積(たいせき)岩、変成岩とともに岩石の三大区分の一つである。この岩石の分類法に従うと、同一の岩石が二者ないし三者にまたがって命名されることがおこる。たとえば火山灰層が変成作用を受けてできた緑色岩は、火成岩であり、堆積岩であり、また同時に変成岩でもある。火成岩はさらにマグマ固結時の環境条件によって、マグマが地表に噴出してできる火山岩と、マグマが地下で固結してできる半深成岩(脈岩)と深成岩(プルトニックロック)に大別することが多い。このうち深成岩は、日本語訳の意味と元のplutonic rockの意味にはかなりの差があり、元来は変成岩類の一部のものを含んで地下深所で形成された岩石類(花崗(かこう)岩、片麻(へんま)岩などを含めて)の総称ともされていた。ドイツ学派の岩石学者たちは、火成岩の分類法を体系化する意図から、完晶質で粗粒なものを深成岩として、斑晶(はんしょう)質の岩石を半深成岩(脈岩)として中間に分類し、火成岩を固結した深さによって整理することを試みた。しかし、火成岩の粒子の大きさは、冷却条件だけではなく、揮発性成分の濃度が重要な役割を果たしているので、粒度と固結した深度とはかならずしも比例してはおらず、この分類法には困難な点がある。このようなことから、火成岩については、野外での産状、分布、形態などが重要視され、火山岩(噴出岩)と貫入岩に分けられることになる。両者は連続的、漸移的なものである。採取された岩石資料だけでは、この分類のいずれに属するか判定できないことがしばしば生じる。貫入岩として一括されるもののなかには、多量の変成岩類を伴う種類のものと、火山体の直下に位置してわずかの接触変成岩しか伴わない種類のものがあるので、前者を深成岩群、後者を噴出岩といっしょにして火山岩群として分類するほうがよいとする意見も専門家のなかでは根強い。
[矢島敏彦]
マグマが地表に噴出して形成される火山岩類は、地表を流動し、冷却、固結してできた溶岩と、マグマを押し出す力が強いため空中または水中にマグマが放出され断片化したものが冷却、固結してできる火山砕屑物(さいせつぶつ)に分けられる。溶岩は表面の形状によって、アア溶岩、パホイホイ溶岩、縄状(なわじょう)溶岩、枕状(まくらじょう)溶岩などに分けられる。溶岩流の表面のみ固結し内部の液状部が流動を続ければ溶岩トンネルとなる。海水中を流れる溶岩が落差のある所で半流動状にちぎれて積み重なってできたのが枕状溶岩である。火山放出物は、噴火の際に上昇してきたマグマに直接由来するものを本質、火山体を構成する岩片よりなるものを類質、火山体下部の基盤岩の岩片よりなるものを異質とよんで区別する。
火山砕屑物は、大きさ、形状、内部構造によって、火山岩塊、火山礫(れき)、火山灰、火山弾、溶岩餅(べい)、ペレーの毛、ペレーの涙、軽石、岩滓(がんさい)などに分けられる。これらの火山砕屑物が地上に堆積、固化してできた火山砕屑岩は、火山角礫岩、凝灰(ぎょうかい)角礫岩、凝灰岩、凝灰集塊岩、岩滓集塊岩、軽石凝灰岩、岩滓凝灰岩とよばれる。
地下でマグマが固結して、他の岩石の間を埋めている場合に、この貫入している岩石の広がりを貫入岩体とよぶ。貫入岩体は形と周囲の岩石との関係から、バソリス(底盤)、ボス、ラコリス(餅盤(べいばん))、岩脈、シート(岩床(がんしょう))、シル、ロポリス、ファコリス、ストック(岩株(がんしゅ))などに分類されている。これらの貫入岩体は通常、完晶質で結晶の大きさはさまざまである。マグマが急冷した周辺部はチルドマージン(周縁部急冷相)といって細粒の場合が多い。貫入岩体を構成する岩石としては、橄欖(かんらん)岩、斑糲(はんれい)岩、閃緑(せんりょく)岩、石英閃緑岩、閃長岩、花崗(かこう)閃緑岩、花崗岩など各種の粗粒岩石、粗粒玄武岩(ドレライト)、斑岩、玢(ひん)岩、花崗斑岩、ランプロファイアなどの斑状岩石などがある。貫入岩体が現在占めている空間は、地層を押し広げてつくられたり、断層や断裂を押し広げてつくられたり、以前その空間を占めていた岩石をマグマの力で破壊したり、削り取ったりして外に押し出してつくられたり、いろいろな場合がある。ときには変成作用や交代作用によって、もとの岩石が変質して火成岩状の岩石ができる場合もある。しかし、その空間がどのような過程でできたのか決定しにくい場合も多く、これを貫入岩の空間問題とよんで、地質学、岩石学の重要な論争点の一つであった。とくに花崗岩類ではマグマ起源のものと堆積岩起源のものと両者が存在していて、この二つを判別することが困難とされている。普通、岩体の周辺部が明瞭(めいりょう)な境界をもっているのがマグマ起源の岩体とされ、不明瞭で漸移的であり、周辺の堆積岩の構造が岩体内部に追跡できるようなものが堆積岩起源とされる。
[矢島敏彦]
火成岩中にはほとんどあらゆる元素をみいだすことができるが、そのなかでも多く含まれている元素は、どの岩石でもおおよそ限られていて、これを主要13成分として酸化物の形で表すと、次のとおりである。それはSiO2、Al2O3、MgO、FeO、Fe2O3、CaO、Na2O、K2O、MnO、TiO2、P2O5、H2O(+)、H2O(-)であって、それぞれケイ素、アルミニウム、マグネシウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マンガン、チタン、リンの酸化物と構造水、吸着水である。このほかには岩石によって、ニッケル、クロム、ジルコニウムなどの酸化物、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、フッ素、塩素などの揮発性元素などがよく含まれており、引き続いて各種の微量元素が認められる。ほとんどの火成岩では主要13成分で99%以上を占めている。とくに、ケイ酸SiO2は火成岩の40%から70%近くを占めており、地球がケイ酸塩の惑星とよばれることがあるのはこのためである。推定では地殻の55%前後がケイ酸からなるとされている。地表で観察される多数の火成岩についてケイ酸の含量の統計をとると52.5wt%(重量比)と73.1wt%のところにピークがある。これは、地表では玄武岩と花崗岩が特別多く分布していることを意味している。この二つのピークの間にもう一つのピークがあって、これが安山岩ないし石英閃緑岩の化学組成に相当することから、安山岩質本源マグマが存在するという考え方もある。特殊な火成岩としては、東アフリカ地溝帯に分布するカーボナタイトのように炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムからできているものもある。月の表面の火成岩も、地球表面の火成岩とかなり近い化学成分のものであるが、アルカリ元素、希土類元素の含有量がやや違っている。また地球では多く分布する花崗岩類や安山岩類のようなカルク・アルカリ岩は知られていない。隕石(いんせき)も地球と類似した火成岩が多いが、破砕された角礫状岩石、集塊岩状岩石の存在が知られている。月も隕石も地球の場合と違って、酸素不足の還元的状況の下で形成されたものらしい。
[矢島敏彦]
野外や大きな標本資料で観察される岩石の形態的な特徴を構造とよぶのに対して、顕微鏡下で観察される岩石の内部形態的な特徴を組織とよぶ。火成岩の構造としては、柱状節理、板状節理などの節理、斑晶鉱物などの配列の仕方による流理構造、揮発性成分の逃げた跡にできる気孔群、気孔中を鉱物が埋めてつくった杏仁(きょうにん)構造などがある。節理は、マグマや火砕岩の冷却の過程、あるいはその後に受けた応力の分布に従って形成される。鉱物の配列の仕方としては、マグマの流れ方と各造岩鉱物の密度、マグマの密度、粘性などが関係している。重力場では重い鉱物が下に沈みやすいため、鉄、マグネシウムに富む苦鉄質鉱物(橄欖石、輝石)が集中的に岩体の下部に分布することがある。また苦鉄質鉱物と、珪長質(けいちょうしつ)鉱物がちょうど地層のように黒と白の帯をつくってほぼ水平に配列することがある。
岩石を薄く切断して0.03ミリメートルの厚さにまで研摩して薄片(プレパラート)をつくると、火成岩を構成しているケイ酸塩鉱物は光を透過して、さまざまな光学的性質を示す。この火成岩の薄片を偏光顕微鏡で観察すると、光学的性質から鉱物の種類を決めることができる。顕微鏡下で観察される組織は、結晶度、結晶粒の大きさ、結晶どうしの組み合わさり方、配列などによる岩石の微視的な特徴によって、さまざまなものがある。結晶度は、ガラス質の部分を含まないですべてが結晶質である完晶質、結晶質とガラスからなる半晶質、ガラス質(玻璃(はり)質)に分けられる。マグマは急冷すると、ケイ酸塩を構成している分子が不規則に配列したガラスとなる。結晶どうしの組み合わさり方としては、粒状、等粒状、斑状(周囲より粗粒な結晶である斑晶と、細粒ないしガラス質の石基よりなる)、オフィチック(輝石中に短冊状の斜長石が一部または全部取り込まれている)、ポイキリチック(多数の各種鉱物が他の大きな鉱物の中に取り込まれている)、流状(細長い結晶が平行に配列している)などがある。
[矢島敏彦]
火成岩の主要な造岩鉱物はあまり多くない。造岩鉱物は、シリカ、アルミナ、アルカリなどよりなり鉄、マグネシウムを含まない珪長質鉱物と、鉄、マグネシウムのケイ酸塩鉱物である苦鉄質(苦とはマグネシウムのことを意味する)鉱物、ケイ酸塩ではないが火成岩中にかなり含まれている磁鉄鉱、チタン鉄鉱、黄鉄鉱などの不透明鉱物(鉄鉱物)、その他の副成分鉱物などからなる。ケイ酸塩は、ケイ素(シリコン)原子1個と酸素原子4個とが結合してできたSiO4正四面体というマイナス2価の電価を帯びた基本物質が、他の同様なSiO4正四面体、プラスの電荷を帯びた金属イオンとどのように結合するかによって、鉱物の種類が決まってくる。珪長質鉱物では、斜長石(カルシウムに富んだ灰長石からナトリウムに富んだ曹長石に至るまで連続的な成分範囲をもっている)、カリ長石、準長石(ネフェリン、リューサイト)、石英、クリストバライト、トリディマイト、沸石などがある。苦鉄質鉱物としては、橄欖石、普通輝石、チタン普通輝石、エジリン輝石、ざくろ石、角閃石、黒雲母(くろうんも)などがある。このほかに白雲母、電気石、ジルコン、チタン石、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、スピネル、方解石、燐灰(りんかい)石などが副成分鉱物として含まれる。
[矢島敏彦]
火成岩には次のような理由で実にさまざまな種類のものがある。(1)マントルなどの地下深所で発生した本源マグマに、すでに数種類の異なったものがあって、これが主要な原因となっている。(2)同一の本源マグマから晶出分化作用によって、早期晶出鉱物、後期晶出鉱物の集積の度合いに応じて多様な岩石種を生じる。(3)上昇してくるマグマと既存の周辺岩石との混成作用によって、マグマの化学組成が変化して、さらに複雑な岩相が生じる。(4)これらの過程を経て地表近くに上昇してきたマグマの冷却、固結の条件(貫入位置の深さ、冷却速度)、噴火の条件などによって火成岩はさらに多様な様相を示すことになる。
このうちどのような本源マグマが生じるかは、マントルないしは地殻下部の部分溶融を引き起こさせる地球内部の温度分布によって決まる。晶出分化作用は、マグマの化学組成と、そこから晶出する鉱物の化学組成との差違に起因するものであって、この差は、晶出する場所の温度、深さによって決まってくる。とくに、地球の重力のために晶出した鉱物が下部に沈積して残りのマグマと反応関係がなくなるかどうかが晶出分化作用の性質を左右するので、マグマの占めている空間の形態、マグマ溜(だま)り、火道、岩体の形状がマグマ成分の変化を大きく支配し、火成岩の多様性の原因となることが多い。マグマが上昇してくる過程で周辺の岩石をばらばらに崩してマグマ中に取り込んだ場合、マグマの温度が十分高く、また熱量が十分にあって、取り込まれた岩石の融点が比較的低い場合には、取り込んだ岩石を完全に溶かすこともある。しかし、普通はマグマの温度がマグマ自体の融解温度をそれほど上回ることはないので、ほかの物体に熱を与えると、鉱物を晶出し、固化することになる。そこで、マグマが周辺の岩石を融解、同化する混成作用は不完全な形で終わることが多い。この場合には、周辺の岩石は捕獲岩、外来岩片(ゼノリス)として火成岩体中に大小さまざまな大きさで散りばめられることになる。
[矢島敏彦]
同じ化学組成のマグマも、固結するときの環境の相違によってさまざまな火成岩になる。マグマは急冷するとガラス質ないし微晶質の火成岩となる。一方、地下でゆっくり冷却すると粗粒な完晶質の火成岩となる。結晶の大きさは冷却速度のほかに、水、塩化水素、フッ化水素などの揮発性成分の含有量に大きく依存している。火山岩では火口下のマグマ溜りなどにおいて、マグマ中に溶け込んでいたガス成分が、マグマが急激に地表に上昇したために体積を増大して、ちょうど炭酸飲料の栓を抜いたときのように発泡現象を引き起こすことになる。軽石、岩滓(スコリア)をはじめとして、溶岩中の気孔などもこのようにしてできる。マグマがゆっくり冷え固まると結晶化が進むことになるが、高温から低温になるにしたがって、形成される鉱物が規則的に変化する。高温側では、橄欖石、輝石類、カルシウムに富む斜長石(アルカリ岩では準長石)などが晶出するのに対して、低温に移行するにつれて、角閃石類、雲母類、ナトリウムに富む斜長石、カリ長石、沸石などが晶出する。少量だが、トパーズ、電気石、斧石(おのいし)、蛍石(ほたるいし)などを伴うこともある。マグマ固結の最終段階では、残りのものは熱水溶液となる。これまで晶出したどの鉱物にも入ることのできなかった元素が、この溶液の中には濃縮されている。この熱水溶液からは石英、方解石のほか、金、銀、銅、鉄、スズ、鉛、亜鉛、タングステン、モリブデンなどの金属元素が硫化物などの鉱脈として形成されて、金属鉱床をつくることがよくある。各種の金属資源のなかには、この種の火成岩起源の鉱床から採鉱されるものが多くある。この種の金属鉱床の形成される場所は火成岩の岩体と接している場合(石灰岩と接する場合など)もあるが、かなり離れている場合も多い。この金属鉱床の形成に関係の深い火成岩のことを運鉱岩とよぶ。
[矢島敏彦]
日本列島の火成岩としては、第四紀・第三紀火山岩23.3%、白亜紀酸性噴出岩3.4%、酸性貫入岩11.8%、塩基性―超塩基性貫入岩0.6%、輝緑岩―玢(ひん)岩1.0%などが分布している。安山岩、石英安山岩、玄武岩、流紋岩、花崗岩、花崗閃緑岩、石英閃緑岩、斑糲(はんれい)岩、粗粒玄武岩、玢岩などが日本列島に分布するおもな火成岩である。このほか各時代の多量の火山砕屑岩、あるいは火山砕屑岩起源の変成岩、花崗岩起源の砂岩などが分布する。
[矢島敏彦]
火成岩とは地下深部で発生するマグマが地表に噴出したり,あるいは地殻中に貫入し,冷却・固結して生じた岩石の総称である。マグマが地表に噴出して生じた火成岩を噴出岩または火山岩と呼ぶ。一方,マグマが地下深部に貫入して生じた火成岩を深成岩,また比較的浅い部分に貫入して生じたものを半深成岩と呼ぶ。しかしこの区別は明確にできるものではない。
マグマが地表に噴出したり,地下の浅い部分に貫入して急冷すると,ガラス質あるいは細粒の結晶の集合物よりなる火成岩を生じる。一方,マグマが地下深部や,あるいは地下の浅い部分でも大きな貫入岩体の内部などで徐々に冷却すると,マグマから晶出する結晶は大きく成長し粗粒な火成岩を生じる。したがって噴出岩は細粒で,深成岩は粗粒のことが多いが,例外も多い。
深成岩や半深成岩の火成岩体はその形態によってそれぞれ名称が与えられている。図にそれらのうちの代表的なものを示す。岩脈dike(またはdyke)とは地層を切った板状の岩体,岩床sheetまたはシルsillとは地層にほぼ平行な板状の岩体,ラコリスlaccolith(餅盤)とは中央部が厚く端が薄いまんじゅう形の岩体,バソリスbatholith(底盤)とは大規模な岩体(露出面積がほぼ100km2以上)で底が認められないものをいう。小規模のものは岩株stockと呼ぶ。地表に溶岩が流出したり,火山砕屑物が噴出して生じる火山岩体には溶岩台地,楯状火山,成層火山,溶岩円頂丘,火山岩尖,砕屑丘などがある。
火成岩はそのだいたいの産状あるいは固結する場所により,上記のように噴出岩(火山岩),半深成岩,深成岩に分類する場合がある。しかし,半深成岩や深成岩の境は明確にはできないし,また一つの貫入火成岩体の中でも噴出岩のような細粒の岩石から深成岩のような粗粒の岩石まで含まれることがしばしばある。したがって野外において産状や固結した深さがある程度はっきりわかっている火成岩にしか適用できず,あまり実用的ではない。そこで火成岩の分類は化学組成と組織によってなされる方がよい。
化学組成は,マフィックあるいは苦鉄質mafic(比較的Mg(苦)やFeに富む),フェルシックあるいはケイ長質felsic(シリカや長石成分に富む),およびそれらの中間の組成の3種に分類する。これらの区別は,マフィック鉱物の量が,ほぼ70~40体積%がマフィック,40~20%が中間組成,20%以下がフェルシックとする(色指数)。ガラス質や細粒の火成岩の場合にはノルムのマフィック鉱物の量を用いる(ノルム分類)。この分類は,シリカの量に基づく分類の塩基性(45重量%<SiO2<52重量%),中性(52重量%<SiO2<66重量%),酸性(66重量%<SiO2)に近いが,必ずしも対応しない。シリカの量に基づくこの分類法では,例えばアルカリ岩と非アルカリ岩とで混乱が起こったり,輝石だけからなる超マフィック岩が中性岩になったりするのであまり適当ではない。
火成岩の主要構成鉱物は,マフィック鉱物(MgやFeを主成分として含む鉱物)としてカンラン石,輝石,角セン石,雲母,磁鉄鉱やチタン鉄鉱,またフェルシック鉱物として斜長石,カリ長石,シリカ鉱物(石英,トリデマイト,クリストバライト)などである。マフィック鉱物は大部分有色鉱物である。一方フェルシック鉱物はほとんど無色である。このため一般にマフィック火成岩は黒っぽく,フェルシック火成岩は白っぽい。ただし例外もあり,例えばほとんどガラスからなるフェルシック火成岩(黒曜石や流紋岩)は黒っぽい。
組織は,構成鉱物の粒度により,細粒(1mm以下),中粒(1~5mm),粗粒(5mm以上)の3種に分類する。細粒と中粒の中には,斑状(一部の結晶が斑晶と呼ばれ大きく,他が石基と呼ばれ中粒,細粒あるいはガラス質)の火成岩も含まれる。表1に上述のような化学組成と組織の分類表を示す。
一般にマフィック火成岩に含まれる斜長石はCaに富み,フェルシック火成岩に含まれるものはNaに富む。ただしアルカリ岩系の火成岩はマフィックなものでもNaに富む斜長石が含まれることがある。表にはこれらのことも示してある。
粗粒なフェルシック火成岩の分類は,含まれる石英,斜長石,アルカリ長石(曹長石を含む)の量比によってなされている。また,斑レイ岩の特殊な岩型として,ユークライト(おもに輝石と斜長石よりなる),アリバライト(おもにカンラン石と斜長石よりなる),ノーライト(おもに斜方輝石と斜長石よりなる),斜長岩(大部分斜長石よりなる)などの識別がなされている。
表2におもな火成岩の平均化学組成を示す。マフィック火成岩→中間組成の火成岩→フェルシック火成岩へと,SiO2やアルカリ(Na2OやK2O)が増加し,酸化鉄やMgOやCaOが増加する。
表1に含まれていない超マフィック岩類ultramafic rocksはマフィック鉱物の量が70体積%以上の岩石である。これらの一部は明らかに火成岩であるが,火成岩か変成岩か明らかでないものもある。超マフィック岩のおもなものは,カンラン石を主とするカンラン岩,輝石を主とするパイロクシナイト,角セン石を主とする角セン岩,ザクロ石と輝石よりなるエクロジャイトなどである。これらはいずれも粗粒な岩石である。
表1に含まれていない火成岩として,そのほかに火山砕屑岩類pyroclastic rocksがある。火山砕屑岩は,火山から放出される火山弾,火山岩塊,軽石,スコリア,火山礫,火山灰などが集まって固結して生じた岩石の総称である。おもな岩石としては,凝灰集塊岩(おもに火山弾よりなるもの),火山角レキ岩(おもに火山岩塊よりなるもの),火山レキ凝灰岩(おもに火山礫よりなるもの),凝灰岩(おもに火山灰よりなるもの),凝灰角レキ岩(火山岩塊と火山灰よりなるもの)などである。これらのあるもの,例えば凝灰岩は堆積岩に分類されることもある。
表1に示したような多くの異なる火成岩が,どのようにして生じたかが火成岩の成因論の主要な問題点である。マグマが徐々に冷却するとマグマから結晶が晶出する。マグマとそれから晶出する結晶とは一般に化学組成が異なっている。したがってマグマから結晶が晶出して沈降などすると,残ったマグマの化学組成はもとのマグマの化学組成とは違ってくる。また,結晶が集まってできた岩石ももとのマグマとは異なる化学組成を有する。このように一つのマグマからでも種々の化学組成の異なる火成岩が生じ得る。さらに,マグマから一度晶出した結晶がマグマと反応する場合が多い。マグマと結晶の反応の程度は冷却速度やその他の要因によって変わり得る。その反応の程度によって残りのマグマの化学組成はさらに変化する。このことはN.L.ボーエンによって1922年に見いだされ,反応原理と呼ばれている。さらに,地下深部で生じるマグマそのものの化学組成がマグマの生じる条件の違いによって異なるため,さらに多くの種類の火成岩を生じる。
→結晶分化作用 →マグマ
執筆者:久城 育夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
地球内部に発生したケイ酸塩溶融体(マグマ)からつくられた岩石の総称.二次的な変質作用を受けていないものをいう.深成岩と火成岩に大別される.地球成因論によれば,すべての岩石は火成作用によると考えられるが,二次的変質を受けた固化岩と火成岩では,構成鉱物の組合せ,あるいはその構造が異なる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…岩石はこの点で,均質で一定(あるいは一定の範囲)の化学組成を有する鉱物と明瞭に区別される。 岩石はその成因によって,火成岩,堆積岩,変成岩の3種に大別される。この区別は1862年にコッタB.von Cottaによって提唱されたもので,現在でも普通に用いられている。…
※「火成岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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