火成岩のなかで、構成鉱物の結晶粒が大きく、完晶質で組織の粗いもの。マグマが地下「深く」でゆっくり固結したものという考えに基づいた名前であるが、実際には細粒の火山岩と密接に伴って産することも少なくなく、組織の粗さと生成の深さとは対応しない。そこで、深成岩という語を廃して、粗粒岩とよぶ意見もある。
[橋本光男]
深成岩の鉱物には、石英や長石のような無色鉱物と、雲母(うんも)、角閃(かくせん)石、輝石、橄欖(かんらん)石などの有色鉱物とがある。そして、有色鉱物の量が岩石全体の40%に達するか否かによって、深成岩を二つのグループに分ける。有色鉱物の少ないグループは無色鉱物の組合せにより、多いグループは有色鉱物の組合せによってさらに細分される。
[橋本光男]
有色鉱物が40%に満たないもので、石英を主成分の一つとして含む深成岩は、広義の花崗(かこう)岩である。花崗岩は石英と長石を主成分とするが、長石にはカリウム長石(カリ長石)と斜長石とがある。それらの組合せにより次のように分類される。
(1)長石がもっぱらカリウム長石であって、それと石英の組合せで特徴づけられるものは狭義の花崗岩とよばれる。これは普通、少量の黒雲母を含む。
(2)長石がほとんど斜長石のみであるものは石英閃緑岩という。このグループは有色鉱物にやや富み、それは黒雲母と普通角閃石である。
(3)長石について両者の中間的なものは花崗閃緑岩で、日本で花崗岩といわれているものの多くはこの種の岩石である。有色鉱物としては黒雲母が主であるが、しばしば普通角閃石をも含む。
有色鉱物が40%に達しない深成岩で、石英をほとんど含まないものは、次のように分けられる。
(4)長石がすべて斜長石であるものは閃緑岩という。有色鉱物はほとんど普通角閃石で、しばしばカルシウム輝石をも含む。
(5)無色鉱物がすべてカリウム長石であるものは閃長岩である。このグループの岩石はしばしばアルカリ(Na2OとK2O)に著しく富み、そのため霞(かすみ)石のように二酸化ケイ素SiO2(シリカ)に不飽和な鉱物を含むようになる。これが霞石閃長岩である。
(6)カリウム長石と斜長石とをほぼ等量に含むものはモンゾニ岩という。
[橋本光男]
有色鉱物が40%を超えると、岩石の肉眼的色調は暗くなる。斑糲岩(はんれいがん)や橄欖岩がこのグループに含まれる。無色鉱物はほとんど斜長石のみで、石英やカリウム長石は普通は含まれない。
(1)斜長石と輝石とからなる深成岩を斑糲岩という。輝石には斜方輝石と単斜輝石とがあり、前者のみを含む斑糲岩をノーライト、後者のみのものを正規斑糲岩、両者をともに含むものをユークライトという。輝石よりも普通角閃石を主として含む斑糲岩もあって、それは角閃石斑糲岩という。
(2)輝石と斜長石のほかに橄欖石が加わった斑糲岩は、前記の名称の前に橄欖石を付して、それぞれ、橄欖石ノーライト、橄欖石正規斑糲岩および橄欖石ユークライトとよぶ。
(3)無色鉱物をほとんど、あるいはまったく含まず、もっぱら橄欖石と輝石からなる粗粒の岩石を橄欖岩またはペリドタイトという。この種の岩石は化学組成において二酸化ケイ素に著しく乏しいので、超塩基性岩ともよばれる。また、酸化マグネシウムMgO(マグネシア)や鉄(FeOとFe2O3)に富むため、超苦鉄質岩あるいは超鉄苦土質岩ということもある。苦や苦土は酸化マグネシウムのことである。ペリドタイトは橄欖石、斜方輝石、単斜輝石の組合せや量比によって、ダナイト、ハルツバージャイト、ウェールライト、レールゾライトなどいろいろに分類、命名されている。そのほか、普通角閃石と橄欖石からなるコートランダイトなどもある。
ペリドタイトの一部は、上部マントルから固体のままでもたらされたもので、マグマの固結によって生成したものではないので、厳密には火成岩ではない。しかし、橄欖石や輝石からなり、粗粒であることなどから、慣習上、深成岩とされてきた。
[橋本光男]
『山崎貞治著『はじめて出会う岩石学――火成岩岩石学への招待』(1990・共立出版)』▽『日本地質学会地質基準委員会編著『地質基準』(2001・共立出版)』
粗粒な結晶よりなる岩石で,一般的にはマグマが地下深所で徐冷・固結して生じたものをいう。しかし深成岩ができる過程は直接見ることができず,上に存在していた岩石が削剝され地表に露出したものを観察するしかない。したがってその成因については不確かな点が多い。また,深成岩はしばしば変成岩と密接に伴っており,両者を明確に区別することができない場合がある。そのような場合には両者を合わせて深成岩と呼ぶことがある。そこで一般には,粗粒,等粒状の結晶よりなり,方向性をまったく,あるいはほとんどもたない岩石を深成岩と呼んでいる。その構成鉱物の多くは半自形~他形結晶である。ただし,地表近くでもこのような火成岩を生じる場合がある。
深成岩も,マフィック鉱物の量に基づく火成岩の分類法により,マフィック鉱物の多いものから順に,超マフィック,マフィック,中間組成,フェルシックと分類されている。また,SiO2量による分類では,SiO2の少ない方から順に,超塩基性,塩基性,中性,酸性と分類されることもある。超マフィックなものにはカンラン岩やパイロクシナイト,マフィックなものには,斑レイ岩やアイジョライトijolite,中間組成のものにはセン緑岩や石英セン緑岩,モンゾナイト,フェルシックなものには花コウ岩,花コウセン緑岩,セン長岩などがある。フェルシック深成岩類は広義には花コウ岩質岩石と呼ばれ,石英,斜長石,カリ長石の割合によりさらに分類されている(フェルシック岩)。超マフィック深成岩類は,カンラン石,斜方輝石,単斜輝石の割合によりさらに分類されている(超マフィック岩)。
フェルシック深成岩は造山帯や大陸地域に広範囲にわたって産する。それらの中には小規模な岩体で周囲に熱変成を与えるなど明らかに貫入岩体と思われるものから,大規模でどのようにしてその空間を占めるにいたったのか不明なもの(バソリスと呼ばれる)まである。マフィック~超マフィックな深成岩は,小規模な貫入岩体から大規模な層状貫入岩体,あるいはオフィオライトの一部分として産する。それらはマグマが徐冷し固結したもの,マグマ溜り中で結晶が沈積して生じたもの(沈積岩あるいは集積岩),またマントルの一部分と考えられるものなどがある。
→深成作用
執筆者:久城 育夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
マグマが地下深所で徐冷によって冷却,固化した岩石.火成岩のうち,火山岩と対比して使用される.一般に,結晶の粒子は大きく,ガラス質部分がほとんどないとされる.代表的なものとして,花こう岩,せん緑岩,はんれい岩がある.このうち,花こう岩がもっとも広く分布し,深成岩の代表とされる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…マグマが地表に噴出して生じた火成岩を噴出岩または火山岩と呼ぶ。一方,マグマが地下深部に貫入して生じた火成岩を深成岩,また比較的浅い部分に貫入して生じたものを半深成岩と呼ぶ。しかしこの区別は明確にできるものではない。…
※「深成岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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