日本大百科全書(ニッポニカ) 「火打焼」の意味・わかりやすい解説
火打焼
ひうちやき
火打餅(もち)ともいい奈良市の名物菓子。この菓子の原型は唐(とう)菓子の飳(ぶと)である。奈良時代の768年(神護景雲2)に春日(かすが)大社が創建され、以来、同社の祭典には神官が狩衣(かりぎぬ)姿で餅を搗(つ)き、油で揚げて神前に供えてきた。「伏兎」とも書くこの唐菓子から思い付いて火打焼を売り出したのは、春日大社前で茶店を営む千代(ちよ)の舎(や)である。元禄(げんろく)年間(1688~1704)のことであった。つぶし餡(あん)を新粉(しんこ)餅で柏(かしわ)餅のようにくるみ、表面を鉄板で焼き清めて客に出したのでこの名がある。いまは求肥(ぎゅうひ)餅にかわった。
[沢 史生]