日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭斗」の意味・わかりやすい解説
炭斗
すみとり
木炭を小出しにしておく入れ物。火鉢や炉に炭を継ぎ足すための道具で、炭火を運ぶ十能もその一種といわれる。蓋(ふた)付きの木箱形のもの、内張りをした籠(かご)、ひさご(瓢)を細工したものなどがあり、形も箱形、丸形、瓢形などと種類が多く、炭箱、炭籠、炭瓢などともいわれ、茶道では中国風に烏府(うふ)とよばれる。炭斗の称は、ひさごでつくった炭取りの形が長柄の杓子(しゃくし)のようで、北斗星に似ているからだといわれ、近世には京都東郊の浄土寺村(現京都市左京区)のひさごでつくったものが名品とされて、もっぱら茶人の間で愛用された。今日この種のものとしては栃木県産の干瓢(かんぴょう)でつくったものが名高い。
[宇田敏彦]