改訂新版 世界大百科事典 「無給油軸受」の意味・わかりやすい解説
無給油軸受 (むきゅうゆじくうけ)
oilless bearing
オイルレスベアリングともいう。すべり軸受の範疇(はんちゆう)に属し,大別すると,含油軸受と乾燥摩擦軸受との2種がある。含油軸受は,軸受材質に多孔性をもたせてそこに油を含ませたものと,軸受材質内に油の粒子を分散させたものとがあり,軸と軸受との間の摩擦熱に伴い,適時,適量の油を摩擦面に供給させ潤滑することを特徴とし,常時給油をする手間を省いた軸受である。多孔性の材料としては粉末焼結によるもの(鉄系,銅系,アルミ系など),鋳鉄の成長現象を利用したもの,合成樹脂の基材の生地を利用したもの(フェノール樹脂),金属の凝固時の結晶微細化を利用したもの(銅系)などがある。分散型のものは熱可塑性樹脂(ポリアセタール樹脂,高密度ポリエチレン樹脂など)の母地に油の粒子を均一に分散させたもので,多孔性の場合と異なり,合成樹脂自体の物理的・機械的強度を損なうことなく,また合成樹脂のもつ自己潤滑性に加えて油による潤滑の相乗効果により,合成樹脂単体に比べ大きい負荷容量の領域で使用することができる。
乾燥摩擦軸受は,四フッ化エチレン,黒鉛,二硫化モリブデンなどの自己潤滑性をもった固体潤滑剤を用いた軸受で,高温,高荷重,水あるいはその他溶液中などの油を使うことのできない条件下で,無給油の状態で使うことのできる軸受である。これら固体潤滑剤は性能を向上させるため,他の材料と複合化して使われる。四フッ化エチレンは黒鉛,二硫化モリブデン,ガラス繊維などを充てん材として加えたり,また耐熱強度の高いポリイミド樹脂に添加して使われる。黒鉛,二硫化モリブデンは金属材料(鋳鉄,青銅など)への埋込み,金属材料(アルミ,青銅など)への分散,粉末焼結による金属(鉄系,銅系,アルミ系など)との結合,金属表面への皮膜形成などの方法により使われている。
→軸受
執筆者:川崎 景民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報