つめを切る道具。古くは,小刀でつめを切ったり,爪磨(つまと)と呼ばれる砥石(といし)でといだらしい。《土佐日記》にもつめを切るのに子(ね)の日を避けた,という記述があり,つめを切る道具があったことがわかる。江戸時代に入り和ばさみの普及にともない,つめを切るのにも使われるようになった。明治時代には,芸妓の懐中道具として作られた,つめ切り専用の握りばさみが流行し,一般にも普及した。てこの原理を使った,折りたたみ式のつめ切りはネイル・クリッパーnail clipperともいい,大正時代に欧米より伝えられて,1935年ころから国内生産が始まった。はさみに比べ,利き手に関係なくじょうずにつめが切れ,収納にも便利で,現在では最も普及している。美爪術(マニキュア)の発達した欧米では,刃先のカーブしたつめ切りばさみ,ニッパー式つめ切りも広く使われている。
執筆者:徳村 薫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…日曜日に切ったら用心を,次の月曜日から土曜日までの間に悪魔があなたをさらう〉とか,〈金曜日に切れば歯が痛くなり,水曜日に切ればねたみをかう〉などという。日曜日のつめ切りはとくに忌み嫌われて,〈日曜日につめを切るくらいなら,生まれてこないほうがよかったぐらい〉とまでいう歌もあり,〈娘が日曜日につめを切ると結婚できない〉という伝えもあり,これらは神々の祭りのときはつめ切りを禁止した古代ギリシアの習慣の名残りだとされる。日本の一部にはかつて乳児のつめを母親が歯でかみ切る習俗があったが,ヨーロッパにも手癖が悪くならぬようにと母親の歯でつめを切るならわしの地方があった。…
※「爪切り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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