父を売る子(読み)チチヲウルコ

デジタル大辞泉 「父を売る子」の意味・読み・例文・類語

ちちをうるこ【父を売る子】

牧野信一短編小説。大正13年(1924)5月雑誌新潮」に発表同名の作品集は同年8月に刊行

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「父を売る子」の意味・わかりやすい解説

父を売る子
ちちをうるこ

牧野信一の短編小説。1924年(大正13)5月『新潮』に発表、出世作となる。同年、新潮社刊の第一創作集『新進作家叢書(そうしょ) 父を売る子』に収録。前作熱海(あたみ)へ』(1923)、『スプリングコート』(1924)とともに、妾宅(しょうたく)に居続ける父との間のトラブルを描いた私小説的作品だが、当時「酔っぱらいのくだ」と評されたような、自嘲(じちょう)的・自虐的筆法や、人物の戯画化が目だつ。執筆中に実父久雄が急逝し、その後日譚(たん)ともいうべき短編『父の百ケ日前後』(1924)以降、牧野の作品はより偽悪の度を増した母親小説へと向かった。

[柳沢孝子]

『『父を売る子』(『鬼涙村』所収・旺文社文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android