牧野信一の短編小説。1924年(大正13)5月『新潮』に発表、出世作となる。同年、新潮社刊の第一創作集『新進作家叢書(そうしょ) 父を売る子』に収録。前作『熱海(あたみ)へ』(1923)、『スプリングコート』(1924)とともに、妾宅(しょうたく)に居続ける父との間のトラブルを描いた私小説的作品だが、当時「酔っぱらいのくだ」と評されたような、自嘲(じちょう)的・自虐的筆法や、人物の戯画化が目だつ。執筆中に実父久雄が急逝し、その後日譚(たん)ともいうべき短編『父の百ケ日前後』(1924)以降、牧野の作品はより偽悪の度を増した母親小説へと向かった。
[柳沢孝子]
『『父を売る子』(『鬼涙村』所収・旺文社文庫)』
ノーベルがスウェーデンアカデミーに寄付した遺産を基金とする世界的な賞。1901年以降行われ、毎年、物理学・化学・生理学および医学・文学・平和・経済学の6部門において、顕著な功績のあった人に授与される。...