岸田国士(きしだくにお)の戯曲。5場。1929年(昭和4)1月《中央公論》に発表。32年6月,日比谷の飛行館で初演。舞台は仏領インドシナのある港の日本人経営の牛山ホテル。S商会出張所主任の真壁が店に大穴をあけてこの町を去るにあたり,落籍し同棲していた娼妓藤木さとを天草の故郷に帰してやることを決めたものの,それが彼女の幸せかどうか思い悩んでいる。その解決もつかぬうち,離婚訴訟中の妻のロオラに真壁はピストルで撃たれて負傷する。さとは真壁と話しあうこともできぬまま,天草に帰るためホテルを出ていく。天草弁をふんだんに使ったこの戯曲は,日本を離れ世界を放浪する自由人にとって祖国とは何かという問いを設定することで,まったく新しい視角から日本および日本人の本質をとらえようとした,特異な作品といえよう。
執筆者:渡辺 一民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ノーベルがスウェーデンアカデミーに寄付した遺産を基金とする世界的な賞。1901年以降行われ、毎年、物理学・化学・生理学および医学・文学・平和・経済学の6部門において、顕著な功績のあった人に授与される。...