真壁(読み)シンカベ

デジタル大辞泉 「真壁」の意味・読み・例文・類語

しん‐かべ【真壁】

壁を柱と柱の間におさめ、柱を外に見せた壁。和風建築で一般に用いられる。→大壁

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精選版 日本国語大辞典 「真壁」の意味・読み・例文・類語

しん‐かべ【真壁】

  1. 〘 名詞 〙 柱を外に見せた壁。普通の和風の家屋に用いられている。⇔大壁。〔新住居入門(1963)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「真壁」の意味・わかりやすい解説

真壁(旧町名)
まかべ

茨城県中西部、真壁郡にあった旧町名(真壁町(まち))。現在は桜川市(さくらがわし)の南部を占める地域。旧真壁町は1889年(明治22)に町制施行。1954年(昭和29)に長讃(ながさ)(一部)、紫尾(しいお)、谷貝(やがい)、樺穂(かばほ)の4村と合併した。2005年(平成17)、同郡大和村(やまとむら)、西茨城郡岩瀬町(いわせまち)と合併して市制施行、桜川(さくらがわ)市となった。旧町域の東側は筑波(つくば)山地の山腹斜面をなし、花崗(かこう)岩の露頭が多く、西側は桜川の低地と真壁台地よりなっている。主要地方道石岡下館(しもだて)線、筑波益子(ましこ)線が通じる。筑波鉄道が通ったが1987年3月末で廃止された。古代は新治(にいはり)郡、のち分かれて真壁郡となり、郡衙(ぐんが)が置かれた地という。中世は真壁氏19代420年の城下町、近世は笠間(かさま)藩浅野氏の陣屋が置かれた。明治時代に自由民権運動の加波山事件(かばさんじけん)があった。加波山から良質の花崗岩(かこうがん)(御影(みかげ)石)が切り出され、灯籠(とうろう)、石碑など石材品の産が多く、真壁石灯籠として国の伝統的工芸品に指定。土管、植木鉢をつくる紫尾焼や梵鐘(ぼんしょう)の鋳造特産。温州(うんしゅう)みかん栽培北限の一つでもある。米、トマト・キュウリなどの野菜、小玉スイカなどの農業も盛ん。伝正(でんしょう)寺は「下駄(げた)の恩」で知られた伝説をもつ景勝地にある。ほかに国指定史跡の真壁城跡や、薬王(やくおう)院三重塔、最勝王(さいしょうおう)寺の宋(そう)版一切経など県指定文化財が多い。真壁には江戸時代の町割がよく残り、近代の町家なども残る。重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

[櫻井明俊]



真壁(建築)
しんかべ

架構式構造において、軸組材の面内(めんうち)に壁を収める建て方で、大壁(おおかべ)造とは逆に柱などの部材が壁面に露出する形となる。伝統的和風建築はほとんどこの真壁造により、通常は小舞(こまい)下地土壁で壁をつくるが、板その他の乾式材を用いることもある。真壁造では柱などの軸組材が化粧となるので、それらには美材が選ばれ、継手(つぎて)、仕口の加工さえも単に強度をもたせるだけではなく芸術的な扱いを必要とし、そのために日本の大工技術を世界の最高水準まで引き上げることになった。また軸組が外気にさらされるので、大壁造ほどには湿潤の害を受けることは少ない。しかし、美観を重視するあまりか鉄物(かなもの)(釘(くぎ)、ボルトなど)による軸組の補強を極力避けようとし、筋違いなどの組込みも困難であるので、建物全体の強度としては大壁造に劣ると考えられる。真壁造のいま一つの見どころは、ちり幅(柱面から壁面までの沈み幅)を各壁の四周に関し一定とすることで、これまた日本では左官工事などで細心の注意を払って施工される。ヨーロッパでいうハーフティンバーhalftimberも一種の真壁造であるが、建築全体の構成にはみるべきものがあっても軸組材は一般に粗放であり、ましてちりにまで考慮の払われることはない。

[山田幸一]

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改訂新版 世界大百科事典 「真壁」の意味・わかりやすい解説

真壁 (しんかべ)

壁の仕上面を柱と柱の間に設け,柱が見えるように造った壁。大壁に対する語である。元来は和風木造建築における構法をいうが,近年,材料を問わず同じように柱を見せる壁を一般的に真壁と呼んでいる。真壁の伝統的な構法としては,柱間に渡された(ぬき)に間渡し竹を掛け,これに小舞竹を格子状に添わせて縄で組み,壁土を塗って最後にしっくいなどで仕上げる小舞壁があるが,最近では貫をたよりにセッコウボードに多数の孔をあけたラスボードを張り,プラスターで下塗をする略式構法が多用されている。またボードを張った上に布や紙で仕上げる乾式構法もある。壁:の両面が真壁の場合は筋かいを入れることがむずかしく,片面の場合も大きな筋かいは入らない。また,柱に見ばえのよい高価な化粧材を用いる必要があるほか,水密性,気密性の高い壁にするのはむずかしいなどの問題点がある。反面,柱がつねに内外の空気に触れているため防腐上は好ましく,柱や他の枠材が塗壁の乾燥に伴う収縮変形に対しても一種の目地的な役割をするなどの利点もある。真壁による建物を真壁造ともいう。
小舞
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真壁(旧町) (まかべ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真壁」の意味・わかりやすい解説

真壁
まかべ

茨城県中西部,桜川市南部の旧町域。筑波山地の西斜面からその西方の台地にかけて広がる。 1889年町制。 1954年紫尾村,谷貝村,樺穂村の3村と合体。 2005年岩瀬町,大和村と合体して桜川市となった。中央を桜川が流れ,流域に水田が開ける。中心集落の真壁は中世の城下町で,酒造りが盛ん。山地から採掘される花崗岩は石材として移出されるほか,石灯籠,墓石などに加工される。山麓の陶土を利用した紫尾焼も産する。真壁城跡は国指定史跡。一部は水郷筑波国定公園に属する。

真壁
しんかべ

建築の壁のつくり方の一種。日本古来のつくり方で,構造材と化粧材を兼ねる柱と柱の間に壁が収まっているつくり方。したがって内外の壁面には柱が見える。日本建築の白壁と柱のコントラストの美しさは真壁造りのためである。伝統的構法では小舞下地として土壁,漆喰壁などに仕上げるのが標準的であったが,ボードなどを使う乾式構法も見られるようになった。また構造材と化粧材を兼ねるため材料の選択に留意する必要があり,経済的には割高になる例が多い。 (→大壁 )  

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百科事典マイペディア 「真壁」の意味・わかりやすい解説

真壁【しんかべ】

柱を外面に現す壁を広くいうが,特にこの形式の和風土壁をいう。大壁の対。初めは仏教建築に,のちには住宅その他日本建築に広く使われるようになった。施工方法は,柱の間に(ぬき)を入れ,割竹を細縄で編みつけて壁下地とし,それに壁土を塗りつける。柱の防湿には有利だが,筋かいの使用が限定される。
→関連項目大壁

真壁[町]【まかべ】

茨城県西部,真壁郡の旧町。筑波山や加波山の西斜面と桜川低地を占め,低地は水田地帯をなす。主集落は中世真壁氏の支配下にあり,近世には真壁藩の城下町。醸造が盛んで,石材も多産。2005年10月,西茨城郡岩瀬町,真壁郡大和村と合併し市制,桜川市となる。63.40km2。2万175人(2003)。

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リフォーム用語集 「真壁」の解説

真壁(大壁)

木造伝統構法の代表的な壁工法。壁の仕上げが柱や梁などの構造材の表面より内側に納まる工法のため、表面に露出した構造材が化粧材の機能も兼ねる。調湿作用をもつ構造体の木材が露出しているため、建物の耐久性や居住性・メンテナンスの容易性などの面で優れている。→大壁

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「真壁」の解説

しんかべ【真壁】

木造家屋で、壁が柱の幅より薄く、柱が外面に見える壁。⇔大壁

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世界大百科事典(旧版)内の真壁の言及

【白髪部】より

…白髪部という氏姓は,武蔵,上総,下野,美濃などの東国と山背,備中などに分布する。この後,光仁天皇の諱(いみな)である白壁を避けて真壁と改められたが,《和名抄》では,真壁郷は駿河,常陸,上野,下野,備中にみられるから,これをみても東国に多い。かつて東国から出仕した舎人らのため設定されたものであろう。…

【壁】より

…繊維壁の場合は下地にボードを用い,下塗や中塗なしに直接塗りつける。また,土壁は柱との納まりの関係から,柱の露出する真壁(しんかべ)式と柱を外側から塗り込んでしまう大壁式とに分けられる。大壁式塗籠の一種である土蔵造は耐火用として中世から倉に用いられ,近世には城郭に用いられておおいに発達した。…

【社寺建築構造】より

…そのため,壁をまったくもたない建築も可能であり,また一般に窓や出入口は煉瓦造,石造に比べてはるかに大きい。壁は薄く,柱や貫を外に出す真壁(しんかべ)であるから,柱を壁が包む大壁(おおかべ)と違って,構造の主体である柱,梁,貫はすべて外に表れ,建築意匠として重要な役割を果たす。またそれらの材料の良否が,ただちに建築意匠に関連してくる。…

【日本建築】より

…このような柱と屋根だけで壁のない開放的な構造は,西洋の建築からいえば建築という名に価しない構造物のようにもみられよう。壁が少なく,あっても柱を外に出した真壁(しんかべ)であるから,大きな壁面は構成されない。このため建物の外観は軽快となり,量感に乏しくなる。…

【民家】より

…屋根葺き材の種別では,茅葺き(かやぶき)(藁葺き),杉皮葺き・板葺き(ともに石置屋根),桟瓦(さんがわら)葺き,本瓦葺きがある。外壁の種別では柱を外に見せた真壁(しんかべ)式と,の中に柱を塗り籠めた大壁式に大別される。真壁式は東日本,大壁式は西日本の民家に多い。…

※「真壁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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