牛頸須恵器窯跡(読み)うしくびすえきかまあと

国指定史跡ガイド 「牛頸須恵器窯跡」の解説

うしくびすえきかまあと【牛頸須恵器窯跡】


福岡県大野城市上大利・牛頸にある窯跡。福岡平野の東南部に分布する、6世紀中ごろから9世紀中ごろにかけて操業された、近畿を除けば西日本で最大規模の須恵器窯跡群。調査の結果、窯跡は東西約4km、南北約4.8kmの範囲に分布し、本来500基ほどがあったと推定され、2009年(平成21)に国の史跡に指定された。窯は地下式窖窯(あながま)で、6世紀中ごろから末にかけて大型化が進み、6世紀末~7世紀前半には全長が10mを超すものが多くなり、それ以後は小型化した。窯の大型化が進む時期には、焼成部の奥に複数の煙道をもつ牛頸窯跡特有の多孔式煙道窯が多く見られる。「和銅六年」(713年)銘のへら書きのある須恵器が出土した本堂遺跡からは、竪穴(たてあな)式住居や掘立柱建物の跡が確認され、工人たちの集落でもあったと考えられる。古墳時代から奈良時代前半の焼成器種は、坏・瓶類・甕(かめ)など多様だが、奈良時代中ごろには坏・皿などの小型器種に特化されたようである。その流通範囲は、古墳時代は福岡平野周辺に限定されるが、奈良時代には律令制下の国境を越えて、九州北部全体に広がっていることから、須恵器窯業の変遷過程や生産と広域流通の実態を知るうえで貴重な遺跡となっている。JR鹿児島本線大野城駅から西鉄バス「日の浦」下車、徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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