物質移動(読み)ぶっしついどう(その他表記)mass transfer

改訂新版 世界大百科事典 「物質移動」の意味・わかりやすい解説

物質移動 (ぶっしついどう)
mass transfer

固体中あるいは流体中を物質が主として拡散の作用によって移動する現象。固体中の移動は,もっぱら分子濃度差と熱運動による分子拡散で行われるが,流体中の移動には分子拡散のほか,乱流に起因する不規則な変動運動による乱流拡散が寄与する。ただし流体の場合でも固体との界面近くでは,乱れが抑制されるため分子拡散が支配的となる。物質移動という場合,このような均一相内の移動よりも,固体-液体,気体-液体のような異相間移動現象がより重要で,ここに大きな関心がもたれている。いずれの場合も単位面積当りの物質移動速度N両端の濃度差⊿Cに比例する。つまり

 NkC

と表せる。kは比例係数物質移動係数と呼ばれる。物質移動係数と伝熱係数には相似法則が成り立つ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「物質移動」の解説

物質移動
ブッシツイドウ
mass transfer

濃度差を小さくする方向への物質の移動をいう.濃度が異なる相(固-液,気-液,気-固など)が接触する場合,界面を通して濃度の高い相から低い相へ物質が移動する.濃度差がなくても,たとえば,多孔質固体内の水分の移動のように,毛管作用によって起こることもある.工業化学装置内では,ほとんどすべての場合,なんらかの形で物質移動が起こっているが,物質移動過程は異相間の場合が多い.たとえば,気泡塔においては,液体中に分散した気泡からガス成分が気泡と液体との界面を通って液体中へ溶解していき,さらに液全体に分子拡散あるいは流体の乱れによって運ばれていく.このような物質の移動速度は,分子論的または流体力学的に研究されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の物質移動の言及

【マス・ムーブメント】より

…本来の語意からすれば,マス・ウェースティングmass wastingの語をあてるのが適当とする意見もある。訳語としては物質移動が提唱されているが,あまり一般化していない。
[マス・ムーブメントの分類]
 マス・ムーブメントは,地質,地形,気候,植生などの諸条件が複雑に関与し合って生じるので,運動の様式や速度がさまざまのものを含んでいる。…

※「物質移動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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