特殊黄銅(読み)とくしゅおうどう(その他表記)modified brass

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「特殊黄銅」の意味・わかりやすい解説

特殊黄銅
とくしゅおうどう
modified brass

普通黄銅以外の黄銅系合金総称。種類は非常に多い。 (1) 丹銅 低亜鉛黄銅 (亜鉛7~20%) で,赤みが強いのでその名があり,赤色真鍮ともいう。深絞り性がよいので絞り加工品に,色沢がよいので装身具,建築金具に,耐食性がよいので電気部品,バルブフランジなどに使われる。亜鉛 10%の丹銅はトムバックといって気密性ベローズに用いられる。 (2) 快削黄銅 β黄銅に鉛 (3.5%以下) を加えたもの。切削性がよく,鉛2%以下なら鍛造性もある。β黄銅にアルミニウムマンガンスズ,ケイ素を各1~3%加えたものは鍛錬性がよく強力で,焼鈍状態の引張り強さ 440~540MPa以上あって,耐食性もよく脱亜鉛現象を示さないので,舶用プロペラ軸,ポンプ軸に用いる。 (3) ネーバル (海軍) 黄銅 亜鉛 35~40%のα黄銅またはβ黄銅にスズ (0.5~1.5%) を添加したもの。名称は古くから船舶部品に多用されたことによる。耐食性がよいので化学工業方面に用いられる。マンツメタル,アドミラルティブラスも同系統の合金。スズの代りに鉄 (1~2%) を加えた合金は鉄黄銅またはデルタメタルといい,耐食性がよく強靭なのでネーバル黄銅と同様に使われる。 JIS の C6711 (楽器弁用黄銅) はネーバル黄銅に鉛 (0.1~1.0%) ,マンガン (0.05~1.0%) を加えたもので,打抜き性,耐疲労性がよく,オルガンなどの楽器弁のほかにも用途が広い。 (4) 鋳物用黄銅 α黄銅に鉛,スズを加調したものが主であるが,特に高力を要する鋳物はβ黄銅にマンガン (4%) のほか,スズ,アルミニウム,鉄を加調する。後者は俗にマンガン青銅といわれるが,実質は黄銅系合金である。これらの鋳物は機械部品,ボイラ部品,建築金物,歯車,舶用プロペラに用いられる。 (5) ろう接用黄銅 銅 32~62%の範囲で,スズ,鉄,鉛,アルミニウム,マンガン,銀などを少量加調,残り亜鉛で,融点 900℃前後,強さを要するときはニッケルを加えたものを使う。

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世界大百科事典(旧版)内の特殊黄銅の言及

【銅合金】より

…とくに鉛を含むものは切削性が優れているので快削黄銅と呼ばれ,自動切削が普及するにつれて重要性が増している。 7‐3黄銅や4‐6黄銅に0.5~2%程度の添加元素を加えて改良した黄銅を特殊黄銅という。7‐3黄銅に約1%のスズを加えたものをアドミラルティ黄銅,4‐6黄銅に加えたものをネーバル黄銅といって,耐海水性がよく,船舶用や海水を使用する復水器用の管として使用してきたが,海水が汚染するにつれて腐食が問題となり,約2%のアルミニウムと少量のヒ素を添加したアルミニウム黄銅(アルブラック)が開発された。…

※「特殊黄銅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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