改訂新版 世界大百科事典 「狂歌咄」の意味・わかりやすい解説
狂歌咄 (きょうかばなし)
仮名草子。5巻5冊。浅井了意作。1672年(寛文12)刊。武藤西察版下書。〈つれつれなるまゝに庇の簾にむかひてこゝらにうたひゆく世になしことをそのわけもなく聞つくれはあだしうこそ物さはかしけれ〉と《徒然草》を模した序文で始まる本書は,狂歌を話の中心に据えた逸話集である。柿本人丸,小野小町らの歌や,古書に見られる歌とそれをもととする狂歌,また当代の狂歌を含む笑話が主であるが,〈誹諧躰〉の定義を述べたりする歌論書めく部分もある。話の配列は,連想によってつながれるテーマごとに,いくつかの話が連なる,という構成になる。本書には出てこない,曾呂利新左衛門の狂歌をまじえた逸話を,巻一巻頭に増補し,書名を《曾呂利狂歌咄》と改めた後印本が数種ある。
執筆者:松田 修
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報