曾呂利新左衛門(読み)そろりしんざえもん

精選版 日本国語大辞典 「曾呂利新左衛門」の意味・読み・例文・類語

そろり‐しんざえもん‥シンザヱモン【曾呂利新左衛門】

  1. 豊臣秀吉寵臣御咄衆とされる。和泉国大阪府)堺の人。本姓杉本。初名甚右衛門または彦右衛門。刀の鞘師を業とし、刀がその鞘口に「そろり」とよく合うので世人が称したという。機才にとみ頓智話に妙を得たので、秀吉に寵愛された。実在しなかったともいう。生没年不詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「曾呂利新左衛門」の意味・わかりやすい解説

曾呂利新左衛門 (そろりしんざえもん)

泉州堺の人で,豊臣秀吉の御伽衆(おとぎしゆう)だったといわれるが不明。生没年不詳。本姓は杉本または坂田氏,甚右衛門,彦右衛門と名のり,刀の鞘師を業とし,鞘に刀がソロリと入ることから〈曾呂利〉と呼ばれたという。茶人であり,頓智頓才をもって秀吉の寵遇を得たことが《岩淵夜話》《半日閑話》《曾呂利物語》《曾呂利狂歌咄》《曾呂利怪談咄》などにより伝承されている。《堺市史》に屋敷跡があるといい,1591年(天正19)に没したとか1603年(慶長8)没とかいわれるが伝記不詳。《昨日は今日の物語》に曾呂利の名が記されているが新左衛門かどうかはわからない。《曾呂利狂歌咄》には,曾呂利の経歴を略述し,秀吉秘蔵の枯松を祝い直す歌,ほうびに耳をかがせてもらう話,黒胡麻のあんを乗せた餅を黒駒になぞらえた歌などが記されているが,これは浅井了意作の《狂歌咄》を京都の菊屋喜兵衛という本屋が1672年(寛文12)に出版するにあたって特に付加したもののようである。この《曾呂利狂歌咄》は,落語元祖といわれる安楽庵策伝の作であるということが《遊芸起原》《帝国文庫・落語全集》解題などに記され,さらに曾呂利新左衛門は実は安楽庵策伝のことであるという伝承もある。《曾呂利狂歌咄》の中には策伝の《醒睡笑》と重複する話が30もある。いずれにしても曾呂利新左衛門は史上では名高く,大阪の落語家で2代目曾呂利新左衛門(1843-1923)を名のったものがいる。
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朝日日本歴史人物事典 「曾呂利新左衛門」の解説

曾呂利新左衛門

生年:生没年不詳
豊臣秀吉の御伽衆(御咄衆)といわれる人物。本名は杉本または坂内氏といい,通称は惣八,新左衛門,甚右衛門,あるいは宗拾,伴内などと号したともいう。が,実伝は明らかではない。『堺鑑』によれば泉州堺の鞘師で,細工に妙を得,刀の鞘口がソロリと合うので「鼠楼栗」の異名があった。咄巧者であったため秀吉に召し出されて御伽衆に加えられ,関白豊臣秀次邸にも出入りしたという。志野流の香技を身につけ,千利休に茶の湯を学んだとも伝えられる。『甲子夜話』『閑窓瑣談』『皇都午睡』などの江戸時代の随筆は,おどけ咄の巧者,狂歌の名手としてその逸話を伝え,秀吉との機知に富んだ応酬はしばしば講談や滑稽談にも語られている。即興歌の褒美に秀吉の耳を嗅ぐという奇妙な特権を得た新左衛門が,その所作を秀吉への耳打ちと信じた大名から付け届けをせしめる「耳嗅ぎ」などが特に有名。『堺市史』には関係史料としての逸話とともに,新左衛門の本名という坂内宗拾の書状を紹介している。ただし,この両者が同一人物だという確証はない。

(二木謙一)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「曾呂利新左衛門」の解説

曾呂利新左衛門 そろり-しんざえもん

?-? 織豊時代の刀の鞘師(さやし)。
貞享(じょうきょう)元年(1684)刊の「堺鑑」によると,話上手なことから豊臣秀吉の伽衆(咄(はなし)衆)にくわえられ,頓知頓才で愛されたという。茶人で詩歌にすぐれたともいわれるが,実在したかどうかはあきらかでない。「曾呂里狂歌咄」などにその逸話がつたえられている。
【格言など】猿が殿に似ているのです(秀吉に「余の顔は猿に似ておるか」とたずねられて)

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百科事典マイペディア 「曾呂利新左衛門」の意味・わかりやすい解説

曾呂利新左衛門【そろりしんざえもん】

豊臣秀吉に仕えて頓智(とんち)頓才で喜ばれ,和歌,狂歌,茶の湯にすぐれ,奇行に富む人物として知られる。堺の刀の鞘師(さやし),本姓は杉本(坂田とも),名は甚右衛門などとも伝えるが,実在人物かどうか不明。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曾呂利新左衛門」の意味・わかりやすい解説

曾呂利新左衛門
そろりしんざえもん

安土桃山時代の鞘師。豊臣秀吉の御伽衆として和歌,茶の湯にすぐれていたという。講談中の人物として有名。

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世界大百科事典(旧版)内の曾呂利新左衛門の言及

【香道】より

…道具の共有(帛紗(ふくさ),地敷(じしき),棚,札),様式の等同(十種香と十種茶)はいうに及ばず,茶人にとって香は茶の一部であった。紹鷗,宗易(千利休),津田宗及,山上宗二は武辺隆生(建部隆勝)に香を学び,宗易は宗二に〈香ノ事ハ坂内宗拾(曾呂利新左衛門)ニ問ベシ〉と語ったという記述が《山上宗二記》にみられる。そのほか《南方録》にも茶の記述のみならず,香木・香炉など香に関しての詳細な記載がある。…

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