デジタル大辞泉 「玉の緒の」の意味・読み・例文・類語 たまのお‐の〔たまのを‐〕【玉の緒の】 [枕]1 玉を通す緒の意で、その長短から「長し」「短し」、乱れたり切れたりすることから「思ひ乱る」「絶ゆ」「継ぐ」、玉が並んでいるようすから「間あひだもおかず」などにかかる。「―長き春日を」〈万・一九三六〉「―絶えたる恋の繁きこのころ」〈万・二三六六〉2 魂たまの緒の意から、「現うつし」「いのち」にかかる。「―現し心や年月の行きかはるまで妹に逢はざらむ」〈万・二七九二〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「玉の緒の」の意味・読み・例文・類語 たまのお‐のたまのを‥【玉緒の】 枕① 玉の緒が切れるの意で、「絶ゆ」にかかる。[初出の実例]「新世(あらたよ)に 共にあらむと 玉緒乃(たまのをノ) 絶えじい妹と 結びてし 言は果さず」(出典:万葉集(8C後)三・四八一)② 玉の緒が長いようにの意で、「長し」にかかる。[初出の実例]「相思はずあるらむ子故玉緒(たまのをの)長き春日を思ひ暮さく」(出典:万葉集(8C後)一〇・一九三六)③ 玉の緒が短いようにの意で、「みじかし」にかかる。[初出の実例]「たまのをの 短き心 思ひあへず〈紀貫之〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇二)④ 玉の緒が乱れるの意で、「思ひみだる」にかかる。[初出の実例]「うちひさす宮路を行くに吾が裳は破(や)れぬ 玉緒(たまのをの)思ひ乱れて家にあらましを」(出典:万葉集(8C後)七・一二八〇)⑤ 玉の緒を、「くくり寄す」「継ぐ」「間も置かず」にかかり、また、緒を縒(よ)るの意で「夜」に続く。[初出の実例]「玉緒之(たまのをの)くくり寄せつつ末つひに行きは別れず同じ緒にあらむ」(出典:万葉集(8C後)一一・二七九〇)「うつつには逢ふことかたし玉の緒の夜は絶えせず夢に見え南〈柿本人麻呂〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)恋三・八〇九)⑥ 玉の緒の「緒(を)」と同音を含む「惜し」にかかる。[初出の実例]「まそ鏡 見れども飽かず 珠緒之(たまのをの) 惜しき盛りに」(出典:万葉集(8C後)一九・四二一四)⑦ 生命の意で、「現(うつ)し心」にかかる。[初出の実例]「玉緒之(たまのをの)うつし心や年月のゆきかはるまで妹に逢はざらむ」(出典:万葉集(8C後)一一・二七九二)⑧ 魂の緒の命の意で、「いのち」にかかる。[初出の実例]「逢ふことも誰がためなればたまのをの命も知らず物思ふらん〈寂延〉」(出典:続後撰和歌集(1251)恋二・七二一)玉の緒のの補助注記⑥は「生命の」の意であって枕詞ではないとする説もある。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例