日本大百科全書(ニッポニカ) 「王の舞」の意味・わかりやすい解説
王の舞
おうのまい
民俗芸能。福井県三方上中(みかたかみなか)郡を中心とする若狭(わかさ)湾一帯に多く分布する、悪魔払(ばらい)、鎮(しず)めを主体とした呪術(じゅじゅつ)的な舞。いずれも舞手は顔に鼻高面、頭には鳥兜(とりかぶと)、鳳凰(ほうおう)の冠(かんむり)などの被(かぶ)り物をつけ、鉾(ほこ)を持って、身を反らしたり膝(ひざ)を曲げたりしながら舞うのが特徴である。伎楽(ぎがく)の治道(ちどう)がその祖といわれ、猿田彦(さるたひこ)、天狗(てんぐ)はその変化といわれる。5月1日に行われる美浜(みはま)町宮代(みやしろ)の弥美(みみ)神社の王の舞は、舞手1人、太鼓1人、笛6人からなり、麻生(あそう)と東山(ひがしやま)両地区の若者がそれぞれ4年と1年の交代で舞手を務める。4月8日の若狭町気山(きやま)の宇波西(うわせ)神社の王の舞は、海山(うみやま)、大藪(おおやぶ)、金山(かなやま)、北庄(きたじょう)の各地区が順番に受け持って奉納している。同町天満神社・国津神社・闇見(くらみ)神社・能登(のと)神社などに伝承されているほか各地の民俗芸能にも同様の形態のものがみられる。
[高山 茂]