日本大百科全書(ニッポニカ) 「環境定期券」の意味・わかりやすい解説
環境定期券
かんきょうていきけん
環境保全を目的に、公共交通利用を促進するべく定期券を活用すること。エコ定期券ともいう。地球温暖化の原因となる二酸化炭素や大気汚染物質たる窒素酸化物を削減することなど、行き過ぎたモータリゼーションの弊害を是正することを目的にして、マイカー利用者を公共交通(バス)に誘導するために、1980年代後半に西ドイツ(当時)で始まった。日曜日や祭日に使用する場合、本人以外に大人1人と子供4人までが無料で同行できるなどのサービスがあるフライブルク市の事例が有名である。
日本でも、1997年(平成9)9月に神奈川中央交通が初めて導入した。温暖化防止京都会議が97年末に開催された京都では、「地元のバス会社として排ガスによる二酸化炭素の排出削減に取り組む必要がある」と、98年に京阪宇治交通が西日本で初めて、土・日・祝日に通勤定期券で乗車した本人と同居の家族に運賃の大幅割引を始めた。99年1月現在、東京、神奈川、京都など6都府県の28のバス事業者がこの制度を実施している(いずれの場合も、どんなに長い区間を乗っても大人100円、子供50円という方式が多い)。利用者が減り続けている公共交通機関としてのバスの存在を再認識してもらい、バス離れを防ごうとする目的もある。環境時代における事業者の積極的な取り組みとして注目される。
[植田和弘]