日本大百科全書(ニッポニカ) 「画象石」の意味・わかりやすい解説
画象石
がぞうせき
中国で、墳墓、祠堂(しどう)などの石材に各種の画象を彫ったもの。石造建築の発達を背景として、前漢末期に現れ、後漢(ごかん)時代に盛行した。墳墓石室内の壁面、石柱、天井石、あるいは地上の構築物である石祠堂、石闕(せっけつ)などにみられる。石刻技法には、(1)線画的に陰刻する、(2)画象の輪郭部内を彫りくぼめる、(3)逆に背景部分を削り下げる、などがあるが、いずれも彫りは浅く、画象面は平らに水磨きされるのが普通で、総じて浮彫り的であるよりも、絵画的な表現が基調となっている。その画題には、被葬者の生前の生活(車馬行列、歌舞飲食、狩猟など)、儒教思想に基づく故事来歴、神仙(しんせん)界などがある。
画象石の分布は、山東や南陽(河南省)地方にもっとも集中するほか、江蘇(こうそ)、山西、四川(しせん)などの各地に及び、その作風には強い地方色が表れている。たとえば、山東では様式化した表現の物語的内容が好まれ(武氏祠(ぶしし)画象石、沂南(きなん)画象石墓など)、一方、南陽地方の画象石墓では、神人・神獣が交歓する世界の、自由かつ躍動的な表現に特色がある。
[西江清高]