中国古代において,城門,宮殿,祠廟,陵墓などの入口に立てた1対の高層建物を闕とよんだ。闕の名はその間が欠けて道路になることから,よんだとする説が有力である。闕は一種の見張台で,観ともよばれた。実物の遺構はのこらないが,漢代の画像塼(せん)や敦煌の北朝壁画の城郭図からすると,塼ないしは木造の高い土台を築き,その上に斗栱(ときよう)の組物をもつ部屋を建て,屋根を瓦で葺いた状況がうかがわれる。
石闕は本来木造であった闕を石でまねてつくった石造物で,大型墓の神道(しんどう)(神道碑)や祠廟の入口を飾った。後漢代に全国的に流行したらしく,1979年段階では,四川の高頤(こうい)闕,河南の少室闕など25ヵ所が確認されている。石闕は必ずしも木造の闕を忠実に模倣したものでなく,かなり簡略化したり誇張されており,個々によってかなり異なった形態をとる。しかし,原則としてつぎの要件をそなえている。神道をはさんで左右1対の建物とする。それぞれの建物は,方形の石や細部を彫刻した石材を積み上げてつくる。左右の建物は対称形をなし,神道側を高い主屋とし外側を低い副屋とする。土台の壁面には画像石墓と同じような神話伝説を浮彫風に刻したり,文様の縁取りをいれるものがある。また,建立者の官職・姓名あるいは建設費用を刻み〈漢新豊令交趾都尉沈府君神道〉などと被葬者の官職・姓名と墓域を表示する。土台の上部には柱,桁,梁,斗栱などを彫り出して部屋を表し,その上に平瓦と丸瓦とを交互に並べる寄棟造の屋根をかたどる。ときには主屋の屋根を二重にするものもある。実物の闕と同じではないが,漢代の建築を復原する重要な資料であるとともに,数少ない漢代石造物の遺例として貴重である。また,これは後漢の地方豪族の侮りがたい力量を具体的に示す記念物でもある。
執筆者:町田 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…だが,前漢の遺例はこのほかになく,後漢代に墓前に立てられた石人石獣が後代につながる形式をとる。長期間の間に,原位置から移動している場合が少なくないが,墳丘正面の参道を神道(しんどう)とよび,その両側に左右1対の石闕(せつけつ)(石でつくった入口の楼門),石獣,神道石柱(墓主の姓名を記し墓域を示す標柱。神道碑,華表ともいう)を立てたようである。…
※「石闕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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