白馬の騎者(読み)はくばのきしゃ(その他表記)Der Schimmelreiter

日本大百科全書(ニッポニカ) 「白馬の騎者」の意味・わかりやすい解説

白馬の騎者
はくばのきしゃ
Der Schimmelreiter

ドイツの作家シュトルムの最後の小説。1888年刊。無理解な民衆の抵抗にも屈せず、鋭い観察と信念に基づき、いかなる波浪にも耐えうる新しい堤防を構築する北海の若き堤防監督官ハウケ・ハイエンの物語。新堤防の完成後、彼は旧堤防の改築をめぐり、信念に背いて反対派と妥協、たちまち恐ろしい自然の報復を受け、妻子もろとも高潮犠牲となる。以後、その魂は郷土を守り続け、嵐(あらし)の夜には白馬に乗った彼が現れるとの伝説が生まれた。しかもこの作品は、そうした嵐の夜、土地の古老がその伝説を語り聞かせる枠形式の物語になっている。北海の神秘的世界を背景に、時代に先駆けて合理的精神を体現しようとした人間の悲劇的運命を描く、ドイツ写実主義郷土文学の傑作

[平田達治]

『関泰祐訳『白馬の騎者』(角川文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の白馬の騎者の言及

【シュトルム】より

…《水に沈む》(1876)等の年代記物は地方貴族の非人間性に起因する庶民の悲劇を多く描き,《後見人カルステン》(1878)等の家庭物は父子関係等家族間の愛憎が悲劇を生む必然的経過を追っている。最晩年の傑作《白馬の騎者》(1888)は,超人的な意志の力で周囲の抵抗を排し堤防建設を推進する孤独な男の悲劇的な姿を描く。詩では,北ドイツの冷厳な自然と海を歌ったものに秀作が多い。…

※「白馬の騎者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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