日本大百科全書(ニッポニカ) 「皮様嚢腫」の意味・わかりやすい解説
皮様嚢腫
ひようのうしゅ
卵巣にしばしば発生する奇形腫の一種で、類皮嚢胞(のうほう)ともいう。小児も含むすべての年齢層にみられ、両側性のものが多い。発育が緩やかで気づかれないことが多いが、まれに悪性化する。内壁が皮膚と同じ組織からなり、内腔(ないくう)にケラチンや毛髪などを含むのでこの名称があるが、そのほかに歯や骨、軟骨、神経組織などを含むこともある。
皮膚にもまれにみられ、眉毛(びもう)部、眼瞼(がんけん)(まぶた)、鼻などが好発部位である。直径約2センチメートルまでの小型で球状の皮下嚢腫で、粉瘤(ふんりゅう)との違いは生来性であることと、壁に毛髪などの表皮付属器成分を含むことなどである。ときに下層と癒着しているので、切除時には慎重な剥離(はくり)が必要である。同様の嚢腫は脳腫瘍(しゅよう)の一種として脳底にもみられる。
[水谷ひろみ]