皮膚に隣接した皮下組織に老廃物がたまって徐々に大きくなってくる
瘤ができる病気ですが、異常な細胞増殖の結果、発生する腫瘍(新生物)とは病気の性質が異なり、中身は細胞成分に乏しく、ドロドロした悪臭を伴う泥状の物質で満たされています。体のどこにでも発生しますが、背中や顔などに多いといわれています。
皮膚の老廃物が、何らかの原因でできた皮膚のすぐそばの袋状の組織に蓄積されることで起こると考えられています。皮膚への反復した刺激や、皮膚の一部が外傷などで内側に入り込むことなどが契機となるといわれています。
瘤が発生することで自覚されます。多くは数㎝大ですが、まれに10㎝以上の大きさをとるものがあります(図56)。瘤のまわりの皮膚の状態をよく観察すると、瘤が皮膚に最も接している部分には小さな穴が見つかることがあります。
瘤を無理に潰そうとすると、ドロドロした悪臭を放つ物質が出てくることがあります。普通は痛みを伴うことはありませんが、細菌が感染することがあり、その場合は赤くはれ上がって痛みます。
ごくまれですが、この病気から皮膚がんが発生することがあり、今まで長い間同じ大きさで経過していたものが急に大きくなったときなどに注意が必要です。
典型的なものは、患者さんを外来で診察しただけでこの病気を疑うことができます。あまりに大きく、ほかの腫瘍性疾患などとの鑑別が必要な場合や、手術を行う場合などはMRIなどの画像診断を行うことがあります。
比較的小さく痛みなどの症状がない場合は、多くは経過観察のみでよいでしょう。細菌がついて赤くはれてきた場合は、抗生物質の投与で感染した状態を鎮静できる可能性がありますが、進行したものは手術を行うほうがよいでしょう。
その他、手術が必要となるのは、ほかの腫瘍性疾患との鑑別のため顕微鏡で組織を調べる場合、不快なにおいが気になる場合、外見上目立つなど審美的に気になる場合などです。通常、局所麻酔での日帰り手術となりますが、サイズが大きな症例などは入院して治療する場合もあります。
粉瘤と思われる瘤が現れた場合は、まず近所の整形外科や皮膚科に相談しましょう。赤くはれ上がって細菌が感染した状態の場合は早期の対応が必要です。あまりにサイズが大きいなどほかの腫瘍との鑑別が必要な場合は、専門施設の医師に相談するとよいでしょう。
森井 健司
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
皮膚にできる囊腫で,囊腫壁は皮膚の表皮で構成されており,内容は,表皮細胞が角化して脱落した角質や皮脂などから成る粥(かゆ)状物質である。アテローマとも呼ばれる。皮膚と癒着する,やや硬く,境界は鮮明な腫瘤で,下部組織とは癒着しない。きわめてゆっくりと増大し,大きくなると表面は半球状に隆起し,俗にこぶと呼ばれる状態となる。わずかに青みを帯びて見えることや,圧すると悪臭のある粥状の内容が排出されることもある。囊腫の内容に細菌感染をおこすと,表面の皮膚は赤くはれて,痛みをともなうようになり,炎症性粉瘤と呼ばれる。
治療は囊腫全体を手術によって摘出する。切開して内容のみを圧出しても再発する。細菌感染のある場合,切開排膿し,抗生物質を投与し,炎症症状がおさまってから囊腫壁を摘出する。
執筆者:新村 真人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
皮膚にできる良性腫瘍(しゅよう)で、粥腫(じゅくしゅ)、アテロームAtherom(ドイツ語)などともいう。日常よくみられる「こぶ」の一種である。表皮が真皮内に迷い込んで嚢腫(のうしゅ)となった真性嚢腫と、毛包や脂腺(しせん)の出口がふさがれて生ずる仮性嚢腫とがある。嚢中にはケラチンや脂質などの混じった悪臭のある粥状物が充満し、柔らかくて弾性がある。エンドウマメ大から鶏卵大となり、皮面からわずかに隆起する。皮内から皮下にかけて存在し、手で動かせる。表面は正常皮膚色または淡青色調を呈する。通常は自覚症状を欠くが、二次感染をきたすと赤く腫(は)れて疼痛(とうつう)を伴う。好発部位は、顔面、頭部、胸背部で、陰嚢に多発することもある。成年男子に多く、小児や老人には少ない。治療は、中央に小切開を加えて内容物を押し出すこともあるが、嚢腫壁を残すと再発するので、通常は被膜とともに摘出する。
[水谷ひろみ]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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