改訂新版 世界大百科事典 「目黒行人坂の大火」の意味・わかりやすい解説
目黒行人坂の大火 (めぐろぎょうにんざかのたいか)
1772年(安永1)の江戸の大火。明暦の大火に次ぐ江戸三大火の一つ。2月29日昼過ぎ,目黒行人坂大円寺より出火,西南の強風にあおられ,麻布・芝・郭内・京橋・日本橋・神田・本郷・下谷・浅草等に延焼,千住まで達し,翌晦日夕刻ようやく鎮火した。また29日夕刻,本郷丸山町より出火,駒込・谷中・根岸を焼くという火災もあった。延焼地域は長さ6里(約24km),幅1里(約4km)で,江戸の約3分の1に及び,延焼距離は江戸時代から今日までの最長とされる。類焼は見付8,大名屋敷169,旗本屋敷300余,町数934,橋数170,寺数382にのぼり,死者1万4700人,負傷者6461人,行方不明者4060余人に達したという。4月大円寺放火犯として真秀(俗名長五郎)が逮捕され,6月火刑に処せられた。なおこの年は行人坂の大火のほか,風水害や疫病の流行などがあり,明和九年(めいわくどし)だとして安永と改元した(11月)という。
執筆者:池上 彰彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報