看護記録(読み)かんごきろく(英語表記)nursing record

日本大百科全書(ニッポニカ) 「看護記録」の意味・わかりやすい解説

看護記録
かんごきろく
nursing record

看護職者が、看護実践の一連過程を記録したものの総称

 看護記録は、他の看護職者や医療職者との情報共有、対象者に必要な看護ケアの継続性、一貫性に重要な役割を果たすものであり、監査や看護研究に使用される場合もある。

 看護記録の構成は、施設により異なる部分もあるが、基本的に、(1)基礎(個人)情報、(2)看護問題リスト、(3)看護計画、(4)経過記録、(5)看護サマリーの五つの要素から構成される。(1)の基礎(個人)情報は、年齢、性別、家族構成、社会的背景など、看護を必要とする人を理解するための情報である。(2)の看護問題リストは、対象者の看護上の問題を抽出したリストであり、(3)の看護計画は、看護上の問題を解決するための看護実践計画である。現在多くの病院、施設で標準的な計画が整備されているが、通常、看護職者は、標準的な計画をベースに対象者の個別性を考慮して計画をたてている。看護は複数の看護職者によるチームで行われている現状から、看護計画があることで、対象者に必要な看護ケアを継続、一貫して提供できるようになっている。(4)経過記録は、看護問題の経過や治療、処置、看護実践を記録したもの、(5)の看護サマリーは、対象者の経過や看護のプロセスを要約したもので、退院時、継続看護のための引継ぎ資料として用いられる。

 なお、看護職者が行う記録には、看護記録、助産録、指定訪問看護等の提供に関する諸記録などがあり、助産録は保健師助産師看護師法第42条で記録が義務づけられているが、その他の記録については法的な作成義務はない。しかし、看護記録は診療録カルテ)と同様に重要な証拠となり、看護記録を作成しないことによる罰則等はないが、訴訟になった場合に看護記録に不備があると、対象者にとって必要な看護ケア(観察、処置など)が行われていないと判断されることがある。つまり看護記録は、看護職者が行った看護ケアを法的に証明する資料にもなるものである。

 看護記録の保存期間は、根拠となる法令によって異なるが、医療法では最低2年間の保存を義務づけている。

[横山美樹 2021年3月22日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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