改訂新版 世界大百科事典 「真夢」の意味・わかりやすい解説
真夢 (まさゆめ)
新内節の曲名。本名題《明烏後真夢(あけがらすのちのまさゆめ)》。〈正夢〉とも書く。新内節の《明烏(あけがらす)》が有名だったので,その後日談として滝亭鯉丈(りゆうていりじよう)と2世南仙笑楚満人(後の為永春水)の合作による,人情本《明烏後正夢》が出版され(1819-24),ベストセラーになった。その題名をかりて富士松魯中が1857年(安政4)5月に作詞作曲したもの。上中下に分けられる。上は廓を抜け出た浦里・時次郎が,深川猿江大島への道行で,他流の曲節を巧みに用いた面白い曲節。中はその大島の森に近い慈眼寺に行き,寺の当住が時次郎の叔父なので,遺書と家宝の小烏丸(こがらすまる)の刀を頼み,その場で死のうとする。時次郎のせりふのあとの〈とい弔いも……〉や,浦里のクドキはきかせどころ。下は2人が首を吊って心中をはかったところ柳の枝が折れ,小烏丸の威徳と叔父の法華経の力で生き返り,叔父のはからいで2人は夫婦になるという筋。下は語る人が少ない。
→浦里・時次郎
執筆者:竹内 道敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報