日本大百科全書(ニッポニカ) 「睡眠指針」の意味・わかりやすい解説
睡眠指針
すいみんししん
適切な睡眠量の確保と睡眠の質の向上により国民の心身を健康に保つために、厚生労働省が策定した指針。2003年(平成15)に策定したものを2014年に11年ぶりに改定した。この指針では策定の目的について、「睡眠について正しい知識を身につけ、定期的に自らの睡眠を見直して、適切な量の睡眠の確保、睡眠の質の改善、睡眠障害への早期からの対応によって、事故の防止とともに、からだとこころの健康づくりを目指す」としている。背景には、睡眠不足症候群の増加や睡眠時無呼吸症候群の社会問題化がある。2003年版の指針は「健康づくりのための睡眠指針――快適な睡眠のための7箇条」として策定された。その後の睡眠に関する科学的知見の蓄積と、2013年度からの第二次健康戦略「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」にあわせて睡眠の重要性について普及啓発を推進する目的から、新しい「健康づくりのための睡眠指針2014」は睡眠12箇条によって構成されている。
指針は、科学的根拠に基づき、ライフステージやライフスタイル別に記載され、生活習慣病や心の健康に関する内容を充実することなどを意図して作成された。また、睡眠障害の予防や保健指導の方法、睡眠障害を早期発見するための要点について指摘している。具体的には、適度な運動をする、しっかり朝食をとる、眠りと目覚めのメリハリをつける、睡眠による休養感で心の健康を保つ、昼間の眠気で困らない程度の睡眠をとる、よい睡眠のための環境づくりをする、などである。また、眠くなってから寝床に入り起きる時刻は遅らせない、いつもと違う睡眠に注意する、眠れない苦しみを抱えずに専門家に相談する、など、各世代に共通する留意事項のほか、若年世代は夜更かしを避け体内時計のリズムを保つ、勤労世代は疲労回復と能率アップのため毎日十分な睡眠をとる、熟年世代は朝晩のメリハリをつけ昼間に適度な運動でよい睡眠をとる、など、世代別の留意事項をあげ、よい睡眠は生活習慣病予防につながるとしている。さらに12箇条のそれぞれに詳細な科学的根拠も明示し、寝だめではない毎日の適切な睡眠量の確保や、睡眠不足のときの昼寝の習慣などを提唱している。
[編集部]