六訂版 家庭医学大全科 「睡眠障害」の解説
睡眠障害
すいみんしょうがい
Sleep disorder
(こころの病気)
睡眠障害は、広く睡眠に関する病気全般を指す言葉で、夜間の睡眠が障害されるもの、日中の眠気を呈するものが含まれます。2005年に作られた睡眠障害国際分類第2版では、85の睡眠障害が取り上げられ、その原因に従って病気としての観点から、①
ここでは、睡眠障害国際分類に従って、睡眠障害について代表的疾患を解説しながら示します。
①不眠症(インソムニア)
適切な時間帯に寝床で過ごす時間が確保されているにもかかわらず、夜間に就床してもよく眠ることができず、これによって日中に生活の質の低下がみられる場合に不眠症と診断されます。寝床で過ごす時間が確保できない場合は、不眠と呼ばず「睡眠不足」または「断眠」と呼びます。
夜間の不眠症状には、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難があり、不眠によって起こりうる生活の質の低下としては、いらいら感、集中困難、気力低下など精神的悪影響、
多くの場合、原因になるようなはっきりとした疾患がない一次性不眠症です。一次性不眠症で最も多いのは「精神生理性不眠」と呼ばれるもので、眠れないのではないかという不安や恐怖のため慢性的な不眠に陥るものです。
身体疾患や精神疾患に合併して、あるいは薬物の使用や中断に伴って起こる場合には二次性不眠症と呼びます。
②睡眠関連呼吸障害
睡眠関連呼吸障害は、睡眠中の呼吸障害により睡眠が質的に悪化する睡眠障害です。閉塞性睡眠時無呼吸(へいそくせいすいみんじむこきゅう)症候群がその代表です。これは、中年以降の男性に多くみられ、眠ると舌がのどをふさぎ、空気の通りが悪くなるため、ひどいいびきや呼吸停止が起こります。
いずれの場合も睡眠は浅くなり分断されて、結果として日中の眠気が起こることになります。高血圧、心疾患、脳血管障害などの危険因子となるので治療が必要です。
③
目覚めているための神経機構が障害されるため、夜しっかり眠っていても、日中に異常な眠気におそわれる病気です。ナルコレプシー、
ナルコレプシーでは、日中の眠気だけでなく、笑ったり、びっくりしたりという情動の変化により突然全身の力が入らなくなる情動脱力発作、寝つき際に自発的に体を動かすことのできなくなる睡眠麻痺などの特徴的な症状を伴います。
④概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害は、1日のなかで何時から何時の時間帯に睡眠をとるかという睡眠のタイミングに関連した睡眠障害です。
このグループに含まれるものとしては、夜勤や
⑤睡眠時随伴症
睡眠時随伴症とは、睡眠中に起こる望ましくない身体現象の総称で、正常では睡眠中に起こらないような神経活動亢進によると考えられます。
ノンレム睡眠に関連した睡眠時随伴症としては、子どもの「寝ぼけ」といわれているものの多くがこれに相当します。ぐっすり眠って1~2時間して、覚醒し歩き回る
レム睡眠に関連する睡眠時随伴症としては、夢の内容と一致して大声で寝言をいったり、暴力的な異常行動が起こるレム睡眠行動障害が代表で、高齢男性によくみられます。
繰り返し悪夢をみて、激しい不安や恐怖を伴って覚醒する悪夢障害もレム睡眠に関連した睡眠時随伴症です。
⑥睡眠関連運動障害
夜間睡眠中に体の余計な動きが生じることで、それが刺激になって睡眠が障害されるグループです。代表は、むずむず脚症候群と周期性四肢運動障害です。
むずむず脚症候群では、下肢にむずむずした異常感覚とともに、常に脚を動かしたいという強い欲求が夕方や夜間安静時に出現します。眠ろうと寝床に入るとこうした異常感覚のために寝つけず、眠っても睡眠が安定しません。
周期性四肢運動障害は、周期的な不随意運動が反復して起こるため、それが刺激になって睡眠が浅くなったり、分断されるのが特徴です。
他に睡眠中に足がつる下肢こむらがえり、歯ぎしりなどがこのグループに分類されます。
内山 真
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報