改訂新版 世界大百科事典 「硫化レニウム」の意味・わかりやすい解説
硫化レニウム (りゅうかレニウム)
rhenium sulfide
レニウムと硫黄の化合物で,レニウムの酸化数Ⅱ,ⅣおよびⅦの硫化物が知られている。
硫化レニウム(Ⅱ)
化学式ReS。硫化水素と水素の混合ガスを90℃で酸化レニウム(Ⅵ) ReO3に作用させると得られる。比重7.42。アルゴン中で約1000℃まで安定。水素と反応させると280℃でレニウムと硫化水素とになる。
硫化レニウム(Ⅳ)
化学式ReS2。ReO3と硫黄とを混合し,真空にした状態で400℃で24時間加熱すると得られる。黒色板状結晶。六方晶系または三方晶系。比重7.506(20℃)。酸化剤により過レニウム酸になる。アルカリ,塩酸および硫酸にほとんど不溶。
硫化レニウム(Ⅶ)
化学式Re2S7。酸化レニウム(Ⅶ)Re2O7に硫化水素を20~80℃で通すと得られる。黒色粉末。比重4.866(25℃)。真空中で約600℃に加熱すると完全に硫化レニウム(Ⅳ) ReS2と硫黄とになる。水素気流中で約900℃に加熱するとレニウムになる。水酸化アルカリおよび硫化アルカリにほとんど不溶。空気を断てば塩酸および硫酸に不溶。硝酸,過酸化水素,臭素水などにより過レニウム酸となって溶ける。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報