日本大百科全書(ニッポニカ) 「レニウム」の意味・わかりやすい解説
レニウム
れにうむ
rhenium
周期表第7族に属し、金属元素の一つ。1925年ドイツのノダックとタッケIda Eva Tacke(1896―1978)は、コルンブ石と白金鉱を化学処理して得た試料中に、X線分光分析により新元素をみつけ、ライン川にちなんでレニウムと命名した。希産元素の一つ。輝水鉛鉱MoS2中に硫化物が微量に含まれる。鉱石焙焼(ばいしょう)の煙塵(えんじん)中に酸化レニウム(Ⅶ)Re2O7が濃縮される。水で処理して酸化物を溶かし、塩化カリウムを加えて過レニウム酸塩KReO4を沈殿させ、これを水素還元して金属を得る。銀白色の金属。タングステンに次いで融点が高く、比重も大きい。空気中に置くと室温で表面が酸化され、1000℃以上で黄色の酸化レニウム(Ⅶ)Re2O7(融点297℃、250℃で昇華)となる。湿った空気中では室温でも徐々に酸化されて過レニウム酸となる。微粉末は発火性。高温ではハロゲン、硫黄(いおう)などと直接反応する。金属は酸化力のある酸に溶ける。過レニウム酸イオンReO4-の酸化作用は過マンガン酸イオンよりはるかに弱い。酸化数Ⅱ~Ⅵの化合物が知られる。タングステンよりも電球のフィラメントとして優れ、高真空管材料、熱電対、電気接点、触媒としての用途がある。
[守永健一・中原勝儼]