神子元島燈台(読み)みこもとじまとうだい

国指定史跡ガイド 「神子元島燈台」の解説

みこもとじまとうだい【神子元島燈台】


静岡県下田市にある灯台跡。下田港と東京湾に出入りする船舶のために、1870年(明治3)、イギリス人のブラントンが設計・監督して完成させた灯台で、下田港の南方10kmに位置し、現存するわが国最古の洋式石造灯台である。灯塔は石造円形白色で、1884年(明治17)に2条の黒横線を入れ、基礎の直径は7m、高さは23mで、海抜約30mの岩島最頂部に立っている。職員休息所や物置、第1・第2倉庫などが残り、いずれも石造平屋建ての当初の規模のままで、防波防風用の石垣もある。使用された巨大な石材は下田エビス崎一帯から切り出されたといわれ、これを切り石として整然と積み重ね、鉄棒で連結してからその部分に鉛を充填して固定する堅固な手法だった。わが国における洋式灯台の起源は、幕府が1866年(慶応2)にアメリカ・イギリス・フランス・オランダの4国と締結した改税約書の規定を引き継いだ明治政府が、各国公使と協議して安房野島崎(あわのじまざき)、相模観音崎(さがみかんのんざき)、剣崎(けんざき)、伊豆神子元島、紀伊潮岬(きいしおのみさき)、樫野崎(かしのざき)、肥前伊王島(ひぜんいおうじま)、大隅佐多岬(おおすみさたみさき)の8ヵ所に灯台を設けたことにある。当初の灯台や官舎、倉庫を残すのは神子元島だけであることから、1969年(昭和44)に国の史跡に指定された。下田港から船で約35分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報