禁書令(読み)きんしょれい

改訂新版 世界大百科事典 「禁書令」の意味・わかりやすい解説

禁書令 (きんしょれい)

江戸幕府鎖国の一環として,キリスト教思想の流入を防ぐために設けた法令。その対象は漢籍であって洋書ではない。中国には16世紀末以来,イエズス会系の宣教師が渡来し,布教のかたわら教義書を著し,あるいは布教の手段として西洋科学の紹介につとめた。幕府は1630年(寛永7)に禁書令を制定するが,それは輸入漢籍に混入した教義書の輸入をはばむことを目的としたもので,キリスト教と無関係な西洋科学書の輸入は原則として認められた。ところが85年(貞享2)にいたり,幕府は寛永の禁書令を改めて,検閲を極度に厳しくした。その結果,教義書はもちろん,西洋科学書の輸入もすこぶる困難になった。その後,8代将軍徳川吉宗が改暦を企てたさい,この厳令が西洋学術研究の隘路となっていることを知って,1720年(享保5)にこれを緩和した。それ以来,漢籍による西洋科学の研究は盛んになり,蘭書解読による本格的な西洋学術研究への道も開かれた。
禁書
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android